畑作地帯における地域的な労働力調達・管理方式の諸類型とその機能
【 要約 】 畑作地帯における地域的な労働力調達・管理方式には、日雇い労働力斡旋型従業員派 遣型、作業受託型がみられる。作業受託型では、地域一元的な労働力の調達・管理によ り、労働力の効果的、効率的利用が実現される。
北海道立十勝農業試験場・研究部・経営科連絡先 0155-62-3295
部会名農村計画(農業経営) 専門経営対象畑作分類指導

【 背景・ねらい 】
 畑作地帯では、農家経済の悪化を背景に、所得拡大の手段として、野菜作の急速な導 入が見られる。しかし、労働集約的な野菜作の導入に対し、農家個々による雇用労働力 の確保は困難となっている。このため、地域において一元的に労働力を調達し、管理す る体制を確立することが必要となる。そこで、畑作地帯に見られる地域的な労働力の調 達・管理方式を類型化し、各々の機能を検討することにより、今後の方向を示した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 十勝における地域的な労働力調達・管理方式は、中心となる組織(以下、地域組織) の機能により<日雇い労働力斡旋型>、<従業員派遣型>、<作業受託型>に区分さ れる。
  2. <日雇い労働力斡旋型>(図1)は、地域組織が労働力の募集・登録を一元的におこ ない、農家の要請に応じて労働力を斡旋する。労働力の就労は、斡旋先の農家による 「日雇い」という不安定な形態であり、地域における新たな労働力の確保は難しく、 登録者の減少と高齢化が著しい。このため農家は必要時に安定した雇用ができず、こ の方式に依存した雇用労働力の需給量は年々低下している。
  3. <従業員派遣型>(図2)は、安定して労働力を確保するために、地域組織が労働力 を従業員として一元的に雇用する方式である。従業員は要請に応じて農家に派遣され るが、農家間の労働需要の調整がなされないことから、時期ごとの派遣量の変動が大 きい。このため、農家は必要時に安定して派遣を受けるために、また地域組織は周年 の安定した派遣先確保の必要から、特定農家と地域組織の癒着がおこり、一方で地域 における利用農家率は低下が見られる。
  4. <作業受託型>(図3)では、地域組織が自ら雇用した労働力を用いて、農家から作 業を請け負う。前出の2類型が農家に対し労働力を供給する方式であり労働力の利用 は農家個々に委ねられたのに対し、<作業受託型>では、地域組織によって、労働力 の利用を地域一元的にコントロールする機能が見られる。すなわち、第1に野菜など 振興作物の作業の優先的な受託により労働力の効果的利用が、第2に受託基準の設定 による選択的な受託や作業方法の統一により労働力の効率的利用が、第3に営農計画 と連動した年間作業計画の策定により労働力の周年利用がはかられている。
  5. ここで提示した3類型は、雇用調達機能と労務管理機能が地域的に統合される諸段階 と位置づけられる(表1)。<作業受託型>では、雇用調達機能と労務管理機能の双 方が一元化されることにより、地域において野菜作に対する積極的な労働力の配置転 換と、野菜導入農家に対する安定した労働支援の実現が可能となる。

【 成果の活用面・留意点 】
 地域的な労働力調達・管理体制の実現にあたっては、労働関連の法律を遵守するため に、公共職業安定所、労働基準監督署との協議が必要である。

【 具体的データ 】


                          -----------------
                       構成組織:
                        町、JA他
 --------------- 労働力斡旋依頼→  ---------------
  農   家 ------------------------ 援農協力会
 ---------------  ←労働力斡旋   ---------------
 労働力の雇用                雇用条件設定
 労務管理・・・・↓              ↓労働力の募集

             ---- ---- ----↑登 録
              班  班  班
             ---- ---- ----
     就 労↑  ---- ---- ----
           労  労  労
           働  働  働
           力  力  力
           ---- ---- ----

       図1 <日雇い労働力斡旋型>(A町)



                      ----------------
                      構成組織:
                       町、JA他
                    --------------
                    受入協議会・・
                    --------------
                        派遣条件の設定
                        雇用条件の設定
   -------------- 従業員派遣依頼→  --------------
    農   家 ---------------------- 企   業
   -------------- ←従業員の派遣    --------------
 労 務 管 理↓               ↓労働力の雇用

                   ↑従業員として
      ↑就 労 ---- ---- ---- 会社に所属
            労  労  労
            働  働  働
            力  力  力
           ---- ---- ----

         図2 <従業員派遣型>(B町)


           ------  ----------------
           JA ----- 野菜対策委員会  野菜の生産
           ------  ----------------  体制を統制

                ----------------
 -------------- 作業委託→   農 業 労 働 力
  農   家 ------------------確保推進委員会
 -------------- ←作業実施   ----------------
                     ↓労働力の雇用
                      労務管理・・・・

                      ↑就  労

                ---- ---- ----
                 労  労  労
                 働  働  働
                 力  力  力
                ---- ---- ----

        図3 <作業受託型>(C町)



      表1 地域的な労働力調達・管理方式の類型

  --------------------------------------------------------
               労働力の  労 働  力労務管理
   類 型 区 分     雇用調達  の雇用
               の担い手  主 体  の担い手
  --------------------------------------------------------
  <日雇い労働力斡旋型>  地域組織  農  家  農  家
  <従業員派遣型・・・・・・>  地域組織  地域組織  農  家
  <作業受託型・・・・・・・・>  地域組織  地域組織  地域組織
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【 その他 】

研究課題名:畑作地帯における地域的農業労働力確保の条件
予算区分・・:道単
研究期間・・:平成5年度(平成4〜5年)
研究担当者:岡田直樹
発表論文等:岡田直樹:畑作地帯における地域的農業労働力確保の条件
、        十勝農試経営科研究成績書、1994。

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.509