ネギの冬期育苗における温度管理
【 要約 】花芽分化に対する低温感応性は、葉鞘径4〜5mm以上では、大苗ほど強く、また 花芽分化は、短日で促進され、高温で抑制された。冬期育苗における育苗夜温は花芽分化に対する低温感応性が低いこと、暖房コストの点から、5゚Cが適している。12月上旬以前のは種期では、晩抽性の”長悦”などの品種を用いる必要がある。
北海道立道南農業試験場・研究部・園芸科連絡先0138-77-8116
部会名園芸専門育種対象葉茎菜類 分類指導

【 背景・ねらい 】
 ネギを夏秋期にかけて収穫するためには、育苗は最も寒さが厳しい冬季間に行わなく てはならない。このため、暖房コストや抽台の危険性などの点から温度管理が重要なポ イントとなる。本道の産地では、抽台はあまり問題にされていなかったが、平成5年は 道南の大野町で、抽台が多発した。また近年、簡易軟白栽培など、作型が前進しており これまで以上に抽台が問題となると考えられる。そこで、抽台抑制や省エネに適した、 温度条件設定のため、花芽分化抽台に対する環境条件と冬季育苗における品種、は種期 と夜温について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 花芽分化における低温感応中の苗令(苗の大きさ)の影響について検討した。抽台は苗令が進んだ大苗ほど早く、抽台株率も高く、30日間の低温処理で、半数以上が抽台した。一方、小苗では低温処理により抽台せず、低温感応限界の葉鞘径は4〜5mmの間と推定された(表1)。
  2. 低温感応中の日長では、花芽分化は、8時間日長で16時間日長に比べ促進された。
  3. 低温感応中の高温により花芽分化は抑制され、ネギでも、高温による花芽分化抑制効果が認められ、抽台抑制技術として利用可能と考えられた(表2)。
  4. 育苗夜温は、20゚Cで最も生育が早く、温度が低くなる程、生育は遅くなり、は種期では、遅くなるほど、苗の生育は早くなった(図1)。
  5. 本圃での抽台は、育苗夜温が15゚Cで、5゚Cと同じか、むしろ多くなる場合があり、定植後の低温遭遇量が多かったことが影響したと考えられた(表3)。
  6. は種から収穫までの日数は、早いは種期ほど多かったが、育苗夜温では大きな差は認められなかった。
  7. 品種としては「長悦」が、抽台が少なかった。
  8. 抽台したネギは、非常に固く、食感が非常に悪かった。
  9. 以上のことから、ネギの冬季育苗における夜温は5゚Cが、抽台、育苗時の暖房コストの点から適当であると考えられた。
  10. 無加温ハウス利用の12月上旬以前のは種期では、抽台の点から、「長悦」など、晩抽性の品種の利用が必要であると考えられた。

【 成果の活用面・留意点 】
 ネギの早出し栽培の育苗及び栽培上の資料とする。

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.100