食用ユリの品種特性と春植え栽培法
【 要約 】 食用ユリの品種特性では‘白銀’がりん片子球が大きく肥大性も良く良好であ った。春植え栽培法では、りん茎への養分転流は茎葉展開後に盛んになり、摘 らいによりりん茎の乾物分配率が上がった。カリウムは追肥をしても含有率は 変わらなかったが、窒素は多い方が増収した。
北海道立上川農業試験場 研究部 園芸科連絡先 0166-85-2200
部会名作物部会専門育種・栽培対象 葉茎菜類分類指導

【 背景・ねらい 】
 北海道の食用ユリは全国生産量の約95%を占める重要な特産移出野菜である。食用ユ リの生産は、これまでにウイルスフリー化により一定の成果を納めてきたが近年りん茎 さび症やウイルス性葉枯れ症状の発生により品質低下、生産性の低下がみられてきた。 食用ユリの品種は現在、‘白銀’が約90%、‘夕映’が6〜7%で、その他の品種は4 %程度となっているが、一方で‘白銀’の耐病性に対する不満も多い。  本試験では、食用ユリ品種の特性調査を行うとともに、春植え栽培法について調査し 栽培上の資料を得ることを目的とした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 品種では‘白銀’が葉先枯れが多いものの、りん片子球が大きく、肥大性も良く多 収で、収穫後の変色も遅く良好であった。また、一般球よりウイルスフリー球の方が 病害の発生が少なく、肥大も良好であった。品種の特性は表1のとおりであった。
  2. 摘らいにより茎部への乾物分配率が下がり、りん茎部への分配率が上がった。さら に、無摘らいでは特に前年りん茎の肥大が低下した(図1)。
  3. 食用ユリのりん茎への養分転流は茎葉伸長中に始まり、8月以降の茎葉展開後に盛 んになると推察された。
  4. 無機成分については、無追肥では追肥を行った場合に比べ窒素含有量がかなり少な くなった。カルシウムは葉に多く、その含有率は他のユリ科作物以上であった。一方 カリウムは追肥の有無にかかわらずその含有率に変化がなかった(表2)。
  5. 窒素施肥量は15kg/10aより25kg/10aの方が増収した(表3)。株間は狭いほど 1球重は小さくなるが栽植本数が増すため増収となった。また、種球は大きいほど多 収となった。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 「白銀」が他品種に比べ肥大性、収量性とも良好であったが、葉先枯れが多く、葉 枯れも多い場合があった。
  2. 「白銀」においてもウイルスフリー処理により一層良品質な球が得られるため、種 球の定期的な更新を行う。
  3. 本試験は褐色低地土(砂壌土)における、主に春植え栽培による成績である。

【 その他 】

研究課題名:食用ユリ優良系統の選抜と栽培法改善
予算区分:道単
研究期間:平成5年度(平成2〜5年)
研究担当者:川岸康司、中本 洋、三浦豊雄、塩沢耕二
発表論文等:春植え食用ユリの生育、園学雑、60(別2)、1991
      春植え食用ユリの生育に伴う無機成分含有量の変化、日作紀、62(別2)、1993

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.103