たまねぎのネギアザミウマ防除効率化試験
【 要約 】 たまねぎ圃場における初期成虫の侵入は、短期間に集中し、分散も速やかである。初 期の集中侵入時期を、寄生株率や簡易粘着トラップでモニタリングし、防除開始時期を 設定する。初期防除は、10日以内の間隔で2回連続すると効果が高く、その後の防除 は被害解析の結果から寄生程度指数で20、寄生株率で50を目安に随時行うが、7月 中の防除が有効である。
北海道立北見農業試験場 研究部 病虫科連絡先 0157-47-2146
部会名生産環境専門作物虫害対象 昆虫類分類指導

【 背景・ねらい 】
 ネギアザミウマは微小な昆虫で、幼虫はたまねぎの葉身基部に潜んでおり、その発見 が困難であることからスケジュール防除が実態となっている。このため防除回数も多く 効率的な防除法による減農薬栽栽培技術の確立が必要である。そこでネギアザミウマの 発生動態を明かにし、被害解析から要防除水準を設定し、発生モニタリング法を確立し て、防除の効率化を図る。

【 成果の内容・特徴 】

  1. ネギアザミウマによるたまねぎの被害は、たまねぎ畑の周辺環境によって異なる。たまねぎ畑と水田が混在する地域では、たまねぎ畑が点在する畑作地域に比べ被害が少ないが、防風林や雑草地に隣接する畑での被害は多い。
  2. たまねぎ圃場への成虫の飛来侵入は集中的で、分散も速く、寄生株率が10% になった10日後にはほぼ100%に達した(表1)。
  3. 成虫の多飛来期は、たまねぎ圃場に設置した簡易トラップでも把握が可能であった(表1)が、たまねぎの寄生株率も高まっていて、5日後には幼虫の寄生が認められた。
  4. 発生盛期には幼虫が主体で個体数も多いが、寄生程度指数による省力的な調査でも発生状況が推定できる(図1)。
  5. ネギアザミウマの被害により草丈がわい小となり、倒伏期が遅れ、球の小形化により1球重が減少し規格内球の収量が減収した(表2)。
  6. 被害の程度は7月の累積寄生虫数と相関関係が認められ、7月の株当り累積寄生虫数が1,000頭(30頭/ 日)以上で顕著になる傾向にあった(図2)。
  7. 防除の重点時期は7月で(表2)、10日以内の間隔で2〜3回連続防除すると効果が高い。
  8. 防除開始時期は、成虫の寄生株率が10%以上になったらその10日以内、簡易粘着トラップで多数の捕獲があったら5日以内に設定する。2回目以降の防除は、寄生程度指数が20、または寄生株率が50を目安に随時行う。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. たまねぎの減農薬栽培における、ネギアザミウマの防除体系化に有効である。
  2. 寄生調査は、たまねぎの抽出芯葉を含む3葉を対象に行うが、葉身基部に寄生するので留意する。
  3. 簡易粘着トラップは6月中旬〜7月上旬にかけて、圃場周辺部に設置し、5日間隔で調査するが、トラップの表面に土砂が付着すると粘着力が低下し、調査も困難になるので交換する。

【 その他 】

研究課題名:たまねぎのネギアザミウマ防除効率化試験
     (たまねぎ病害虫の減農薬栽培技術確立試験)
予算区分 :道費
研究期間 :平成2年〜5年
研究担当者:兼平修(中央農試)、小高登
研究論文等:

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.225