リモートセンシングによる有効水分区分図作成手法
【 要約 】 土地利用形態の異なる2地域(水田地帯・畑作地帯)を対象に、衛星リモートセンシ ングデータの中間赤外域の分光反射特性から土壌の有効水分を推定し、広域の有効水分 区分図を作成した。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌資源科連絡先 01238-9-2001 内282
部会名生産環境部会専門情報処理対象 農業工学分類研究

【 背景・ねらい 】
 地力保全基本調査によってほぼ全道農耕地の土壌理化学性が明らかとなっているが、こうした土壌データの更新・収集には、広域を一時に観測し反復が可能な衛星リモートセンシングの利用が有望である。本試験では、北農試・畠中ら(1990)によって報告されたリモートセンシングによる有効水分推定手法を、土地利用形態の異なる地域に適用して、その条件等について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 土地利用形態の異なる空知・十勝両地域について、1985・1990両年の衛星画像から裸地を抽出し、両年の分光反射値の差と表層10cmの易有効水分(pF1.5〜2.7)との関連を検討したところ、中間赤外域であるバンド5で高い相関が認められた(表1)。
  2. 衛星画像からの裸地の判別に際しては、他の分類項目との境界領域・微小区画の除去処理を行うことによって、精度の高い抽出が行われ、また原画像に3×3画素の平均化処理を行うことによって、より高い相関が得られた(図1)。
  3. 得られた最適条件から、1985・1990両年の衛星データを用いて、空知・十勝両地域について、以下の推定式により表層の有効水分が推定された(図2)。 る特性を示した(表2)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 衛星リモートセンシング技術を利用して、土壌の有効水分が推定可能となる。
  2. 本試験で易有効水分が推定された面積は、対象地域の全農耕地面積の10%程度であるので、今後多年次の衛星データを組み合わせて利用することによって、多面積の推定が可能である。

【 具体的データ 】

 表1 1985・1990両年の分光反射値
    の差と易有効水分との相関
---------------------------- 
 波長帯    相関係数
---------------------------- 
 DTM1     -0.17
  2      0.04
  3      0.26
  4      0.19
  5      0.82**
  6      0.23
  7      0.64**
----------------------------- 
DTM:分光反射値の差(バンド1〜7) 
    * :95%水準有意
    ** :99%水準有意


    表2 平均易有効水分の比較
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堆積様式・土性  空 知      十 勝
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火山灰土    77.4mm ( 982 ha) 85.7mm (8,729 ha)
洪 積 土    87.9  ( 231  ) 94.1  ( 352  )
沖 積 土    78.8  ( 854  ) 87.2  (3,387  )
泥 炭 土    81.4  ( 426  ) 83.6  ( 107  )
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砂  質    65.4mm ( 586 ha) 82.4mm (1,388 ha)
壌  質    97.6  ( 453  ) 86.3  (6,186  )
粘  質    81.5  ( 678  ) 87.7  (4,721  )
強 粘 質    80.9  ( 706  ) 79.1  ( 277  )
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【 その他 】

研究課題名:リモートセンシングによる畑地の保水・排水能地図作成手法の確立
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成5年度(平成3〜5年) 研究担当者:安積 大治,志賀 弘行,成田 保三郎
発表論文等:安積ら(1992):畑土壌の水分状態と分光反射,日土肥講要集,39,239
      安積ら(1993):畑土壌の水分状態と分光反射(第2報),日土肥講要集,39,137

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.529