きらら397におけるアミロース含有率の変動要因解明と低下技術
【 要約 】 アミロース含有率と登熟温度には負の相関があり、800℃以上での低下は緩やとなる。低下技術としては成苗化と適期内早植えが重要である。なお、登熟の劣る二次枝梗ではアミロース含有率が低く、さらに遮光処理、止葉切除など登熟不良条件では、アミロース含有率が低く、熱糊化性が劣る。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲栽培科、土壌肥料科
連絡先 0126-26-1518
0166-85-2200
部会名 作物 専門 栽培 対象 稲類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 近年、消費・流通面で良食味米への指向が強まり、銘柄や産地の食味格差が販売・消費に大きな影響をおよぼしている。北海道産米の食味水準は品種開発により確実に向上してきたが、依然として食味に産地間差があり、品種だけでは改善できない問題を抱えている。この問題を解決するため、気象と栽培管理によるアミロース含有率の変動要因を解明し、その低下技術について検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 登熟温度(出穂後40日間の日平均気温積算値、日平均気温は日最高・最低気温の平均値:以下同様)が800℃以下の場合、アミロース含有率は登熟温度が高いほど急激に低下し、800℃を超えるとその低下の程度は緩やかとなる(図1)。
  2. アミロース含有率は登熟の初期から中期にかけて増加し、その後ほぼ一定となる(図2)。また、登熟温度のうち、その前半20日間と後半20日間のアミロース含有率におよぼす影響度は各々2:1あるいは3:1である。
  3. 苗の種類による出穂期の変動は2〜4日で、このときの登熟温度の変動は10〜20℃で、アミロース含有率の変動は0.2〜0.7%である(表1)。移植時期による出穂期の変動は1〜2日で、登熟温度でほぼ10℃前後、アミロース含有率は0.4%以内の変動である(表2)。
  4. 成苗・標準植えは中苗・晩植えよりアミロース含有率は約1%低下する。したがって、アミロース含有率を低位安定化させるには成苗化と適期内早植えが重要である。
  5. 籾の着生位置別にアミロース含有率をみると、下位枝梗および二次枝梗で低い(図3)。さらに下位枝梗および二次枝梗では乳白・腹白歩合が高く、乳白・腹白歩合とアミロース含有率には負の相関関係がある。
  6. 遮光処理あるいは止葉切除処理、すなわち光合成産物そのものが減少する条件では、無処理に比べアミロース含有率は低下するが、熱糊化性は劣る。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 「きらら397」の栽培にあたっては地域における適正栽培を行うこと。
  2. 登熟温度800℃の確保を目標に適期内早植えとし、移植晩限は成苗では5月末日まで、中苗では5月25日頃までとすることが望ましい。
  3. 二次枝梗着生籾を少なくするため栽植密度は機械移植基準を守る。
  4. 成苗では移植時の葉数を確保するため、早期播種にこころがける。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:きらら397におけるアミロース含有率の変動要因解明と低下技術(指導参考)

【 具体的データ 】

 表1 アミロース含有率(%)、出穂期(日)および
   登熟温度(℃)についての成苗と中苗の差
 ---------------------------------------------------
  地域  項目           早植 標準植  晩植
 ---------------------------------------------------
      アミロース含有率      -0.4  -0.7
  稲作部 出穂期              -4.0  -4.5
      登熟温度             24.6  25.0
 ---------------------------------------------------
      アミロース含有率  -0.2  -0.2
  上川  出穂期          -1.5  -2.3
      登熟温度         6.3  17.8
 ---------------------------------------------------
 注)数値は各項目とも(成苗−中苗)の差


 表2 アミロース含有率(%)、出穂期(日)および
   登熟温度(℃)についての移植時期の差
 ----------------------------------------------
  地域   項目         中苗   成苗
 ----------------------------------------------
      アミロース含有率  -0.4   -0.1
  稲作部 出穂期          -2.0   -1.8
      登熟温度         9.5    9.3
 ----------------------------------------------
      アミロース含有率  -0.0   -0.1
   上川 出穂期          -1.3   -0.8
      登熟温度         8.8    0.3
 ----------------------------------------------
 注)数値は各項目とも
   稲作部では(標準植え−晩植え)の差
   上川では(早植え−標準植え)の差

【 その他 】

研究課題名:北海道米の食味水準向上技術の開発
予算区分 :道費
研究期間 :平成8年度(平成3〜8年)
研究担当者:五十嵐俊成・古原 洋・三浦 周
発表論文等:


        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.19