【 背景・ねらい 】
　小豆の種皮色は外観品質や製品の品質に大きな影響をあたえる重要な形質である。近年、種皮色が異常に濃くなる濃赤粒については、実需者から改善要望が強く打ち出され特に、道央産のものが問題視されている。そこで本試験では栽培環境や品種特性が種皮色におよぼす影響を明らかにするとともに、その軽減対策を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

1. 種皮色の評価法
   官能検査の結果、濃赤粒の目安は、十勝の色彩色差計(ミノルタCR-21)においてL*が32未満(b*が14未満)であった(図1)。また、十勝農試と上川農試の色彩色差計間の相関はL*、b*においては非常に高く、測定値の読み替えが可能であった。
2. 発生要因
   1. 種皮色の濃赤化は登熟中期〜後期の高温によって発生し、また、収穫後、乾燥中の雨害によって発生することがある。
   2. 登熟中期〜後期の高温による濃赤化は、十勝では通常、その間の気温が低いため問題とならないが、上川では開花15日後〜15日間の気温が特に影響し、この間の最高気温が28℃を越えると発生する可能性がある(表1)。
   3. 乾燥中の雨害は、収穫後、多雨年に島立てで圃場に放置しておくと発生する(表2)。
   4. 各種施肥法、土壌間差(褐色低地土、淡色黒ボク土、黒ボク土)が種皮色にあたえる影響は小さかった。
   5. 種皮色(L*、b*)は、粒内の窒素、加里、鉄含有率との間に見かけ上の相関が認められたが、気象条件および着莢節位の影響の方がより大きかった(表3)。
3. 軽減対策
   1. 上川では播種を6月上旬前半まで遅らせて登熟を低温側へ移すことが種皮色の濃赤化を軽減する一つの方法である(表4)。
   2. 種皮色には品種間差があるが、加温処理をするといずれの品種も濃赤化することから淡赤の品種特性をもつ品種を作付けすることが濃赤粒発生の軽減対策となる(表5)。
   3. 雨害の発生軽減のためには、圃場で長期間島立てで放置しない。

【 成果の活用面・留意点 】

1. 晩播は成熟期が遅れ、収穫、乾燥期間が低温で降雨が多い時期となるので乾燥に留意し、雨害による被害粒(濃赤粒)の発生を防止する必要がある。
2. 品種間差試験の供試材料には育成中の系統を含む。

【 具体的データ 】

表1 加温処理による種皮色の変化
　　　　　　　(上川農試、平成6年)
　品種名　　　　色彩色差計　　　無処理　加　温
-----------------------------------------------
　　　　　　　　　 L*　　　　　　 33.9　 33.4
エリモショウズ　　 a*　　　　　　 14.7　 13.3
　　　　　　　　　 b*　　　　　　 10.8　 10.2
　　　　　　　　無処理との色差　　標準　　1.6
　　　　　　　　　 L*　　　　　　 33.5　 31.1
アケノワセ　　　　 a*　　　　　　 14.8　 11.3
　　　　　　　　　 b*　　　　　　 11.1　　9.3
　　　　　　　　無処理との色差　　標準　　4.6
　注)加温処理は開花始15日後〜15日間。

　　　　　　　　　　　　　　 (十勝農試、平成8年)
　品種名　　　　色彩色差計　　　無処理　加温Ⅰ　加温Ⅱ　加温Ⅲ
--------------------------------------------------------------
　　　　　　　　　 L*　　　　　　 31.3　　30.5　　30.5　 29.7
エリモショウズ　　 a*　　　　　　 26.3　　27.3　　26.8
　　　　　　　　　 b*　　　　　　 13.4　　12.6　　12.5　 27.1
　　　　　　　　無処理との色差　　標準　　 1.5　　 1.3
　　　　　　　　　 L*　　　　　　 31.9　　30.9　　30.9　 12.6
アケノワセ　　　　 a*　　　　　　 30.2　　28.9　　27.2
　　　　　　　　　 b*　　　　　　 15.3　　13.1　　12.5　　2.0
　　　　　　　　無処理との色差　　標準　　 2.7　　 4.2　 31.0
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 29.3
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 14.3
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　1.6
　 注)加温Ⅰは開花期7日後、加温Ⅱは同14日後、加温Ⅲ
　　　 は同21日後から高温処理。


表2 雨害による濃赤化
　　　　　　　　　(上川農試 平成7年)
　 色彩色差計　　　成熟期　　　 成熟期10日後
　　　　　　　 島立　島+にお　島立　島+にお
---------------------------------------------
　　　L*　　　 34.4　　35.0　 35.3　35.4
　　　a*　　　　9.8　　12.8　 12.8　12.7
　　　b*　　　　8.6　　 9.5　　9.9　10.3
　　色　　差　　3.2　　標準　　0.4　 0.8
　　 注)品種は｢アケノワセ｣。


表3 節位別の粒重、種皮色、成分
　　　　　　　　　　　　 (十勝農試、平成7年)
 主茎　　　 色彩色差計　　粒重　　成分含有率(%、ZnとFeはppm)
 節位　　L*　 a*　 b*　(mg)　N　 P2O5　 K2O　 MgO　Zn　Fe
--------------------------------------------------------------
 4〜 6　33.4　25.3　14.4　154　3.80　0.94　1.77　0.24　23　58
 7〜 8　33.6　25.2　15.5　156　3.68　0.95　1.72　0.24　24　50
 9〜10　34.0　25.2　16.2　126　3.44　0.94　1.70　0.24　24　44
　　 注)品種は｢エリモショウズ｣。


表4　播種期と種皮色
播種　色　彩　　 上　川　　　十　勝
 期　 色差計　H6　H7　H8　H8
-------------------------------------
　　　　L*　　33.9　34.1　34.1　34.9
標準　　a*　　14.7　11.1　18.0　24.9
　　　　b*　　10.8　 8.6　11.4　16.8
　　　　L*　　33.4　34.5　35.2　36.2
晩播　　a*　　15.8　11.6　18.6　23.8
　　　　b*　　12.0　 9.4　12.4　17.8
　色　 差　　　1.7　 1.0　 1.6　 2.0
　 注)品種は｢エリモショウズ｣。


表5 加温処理による品種間の色差(上川農試、平成8年)
　　　　　　　　　　　　　 色　彩　色　差　計　　　　　処理
　 品　種　名　　　　 無　処　理　　　加　温　処　理　 間の
　　　　　　　　　　L*　　a*　　b*　　L*　　a*　　b*　 色差
------------------------------------------------------------
 ハヤテショウズ　　32.1　17.6　10.1　30.7　17.6　 8.9　 1.9
 アケノワセ　　　　32.8　19.4　10.9　32.2　19.6　 9.5　 1.6
 エリモショウズ　　33.3　19.6　10.9　31.9　18.2　10.0　 2.1
 寿小豆　　　　　　33.4　17.8　10.0　31.4　16.0　 8.5　 3.0
 アカネダイナゴン　33.0　15.8　 9.7　32.3　14.4　 9.1　 1.7
 カムイダイナゴン　32.4　17.3　 8.6　31.7　15.1　 8.1　 2.4
 光小豆　　　　　　34.1　19.0　11.6　32.8　17.4　10.8　 2.3
　注)加温処理期間は8月8日〜8月25日の17日間。

【 その他 】

研究課題名：小豆濃赤粒発生要因の解明と防止対策確立試験
予算区分　：道費(豆基)
研究期間　：平成8年度(平成5〜平成8年)
研究担当者：宮本裕之・中津智史・三浦豊雄・東田修司・越智弘明・山神正弘
発表論文等：

　　　　　　　 「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」　P.30