てんさい直播無間引栽培における初期生育の安定化技術
【 要約 】 被覆資材内に殺菌剤、殺虫剤を混入したてんさい直播用被覆種子の開発と、鎮圧法、施肥法を改良した総合施肥播種機を利用することにより、直播無間引栽培でのてんさい稚苗期における病虫害の防除、苗立率と初期生育の向上が図られ、収穫本数と収量の安定確保ができる。
十勝農業試験場・研究部・てん菜特産作物科,
農業機械科
連絡先 0155-62-2431
部会名 作物 高収益畑作 専門 栽培・物理 対象 工芸作物類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 てんさい直播栽培で重要な技術的課題は、発芽および初期生育の確保である。発芽、苗立率を安定化させる上で、苗立枯病および虫害の防除は重要である。また、作物や土壌の特性に合わせた鎮圧法、施肥法の改良によって、苗立や初期生育を向上させる必要がある。そこで、てんさい直播用被覆種子と総合施肥播種機の改良開発により、直播での発芽および初期生育の向上・安定化を図り、直播無間引による省力低コスト栽培技術を確立し、てんさいの大規模栽培への対応を可能にする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 慣行被覆種子(ヒドロキシイソキサゾール(70%)粉衣剤「H」をコーティング資材内に重量比で0.3%混入)に、トルクロホスメチル(50%)水和剤「T」をコーティング資材内に重量比で0.3%混入すると、苗立枯病罹病株率が低下し、苗立率が向上する(表1)。
  2. イミダクロプリド(70%)水和剤「I」を被覆種子のコーティング資材内に混入すると、虫害防除効果は播種後2か月間持続し、テンサイトビハムシなどの虫害防除ができる。混入量はコーティング資材重量比1.5%が適当である(表2)。
  3. 黒ボク土において設定鎮圧力0.35〜0.50kgf/cm2の条件で凸型鎮圧輪(「凸型」)を用いると、平滑鎮圧輪(「平滑」)に比べ、発芽が早まり、苗立率が向上し、85%以上の苗立率を確保できる(表3)。
  4. PTO軸駆動タイプと油圧モータ駆動タイプの2つの作条混和施肥機構(「作混」)について、肥料の混和性能を検討した結果、両機種とも肥料が幅15〜20cm程度、深さ15cm程度の断面に分散し、実用に供しうる機構であると判断された(図1)。この機構を使用した作条混和施肥法により、初期生育が向上し、根重、糖量が増加した(表4)。
  5. 上記技術の組み合わせにより、直播無間引栽培でのてんさい稚苗期における病虫害の防除、苗立率と初期生育の向上が図られ、収穫本数と収量の安定確保ができた(表5)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本技術は適正な輪作体系での直播無間引栽培で適用する。
  2. イミダクロプリド剤混入の被覆種子は、播種後2か月間、圃場でのテンサイトビハムシに対する防除作業を省略できる。
  3. これらの薬剤処理については未登録である。
  4. 凸型鎮圧輪の効果については黒ボク土での成績である。
  5. 作条混和施肥機の使用にあたっては、表層に肥料が集中しないよう、作業時に確認を行う。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:てんさい直播無間引栽培における初期生育の安定化技術(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:直播栽培の無間引き技術の改良開発(平成4〜6年)てんさい直播栽培の現地実証と経営評価(平成7〜11年)
予算区分 :国補(高収益畑輪作、地域基幹)
研究期間 :平成8年度(平成4〜8年)
研究担当者:吉村康弘・白旗雅樹・有田敬俊・手塚光明・阿部晴記
発表論文等:吉村康弘・手塚光明・阿部晴記:テンサイ被覆種子の改良による苗立時の病虫害防除と直播無間引栽培.日本育種・作物学会北海道談話会会報.第35号.1994.
      白旗雅樹、吉村康弘:畦形状による微気象改良の可能性.日本農業気象学会北海道支部会報.1996.
        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.33