いちご「きたえくぼ」の‘先白果’発生実態と緊急対策
【 要約 】 いちご「きたえくぼ」の先白果の発生は、保温開始時期が早く保温から収穫までの期間が長い場合、窒素施用量が15kg/10a以上の場合、透水性が不良または地下水位が高く土壌水分が多い場合に多く見られる。当面の対策は、保温及び収穫時期は早すぎないこと、施肥量を北海道施肥標準以下とすること、排水対策を十分に行うことである。
北海道立道南農業試験場・研究部・園芸科、
土壌肥料科
北海道農政部農業改良課
連絡先 0138-77-8116
部会名 作物 専門 栽培 対象 果菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 道南農試で平成5年に育成されたいちご「きたえくぼ」は、平成8年には約20haの作付けがあり、作付け面積は増加傾向にある。しかし、本格的な収穫が始まった平成7年から各地で果実先端部が着色しない先白果の発生が多くみられ問題となっている。本成績は、現地での発生実態を把握、解析するとともに、当面の‘先白果’発生対策を示したものである。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 発生実態
    1. 先白果の発生は、(1)保温開始時期が早い場合、(2)保温開始から収穫始めまでの期間が60〜70日を越えた場合に高まる傾向が認められた。しかし、乙部町のように、同条件にもかかわらず先白果の発生が少ない地域もあった。この理由には、土壌条件が深く関与していると推定された。
    2. 窒素施用量については、15kg/10a未満では先白果の発生程度が2以上になるものが少なかった。
    3. 先白果の発生には土壌の透水性が不良または地下水位が高いため土壌水分が多いことが影響すると考えられた。
    4. 土壌タイプは黒色火山性土で先白果の発生が低くなったが、これは黒色火山性土の理化学性が関与しているものと考えられた。
    5. 無機成分吸収量が多いほど先白果発生程度は高かった。
  2. 当面の対策
    1. 保温、収穫時期は早すぎないようにし、保温開始から収穫までの日数が長くなりすぎないようにする。保温開始から収穫までの日数を考慮すると、道央部で5月下旬〜6月上旬、道北部で6月中旬〜下旬、道南部で5月上〜中旬の収穫始を目安とする。
    2. 多肥は先白果発生に大きく関与していると思われることから、施肥量は有機物も含め北海道施肥標準以下とする。その際、秋の生育は十分確保するように留意する。
    3. 排水が不良な地帯への作付けは避け、やむをえず作付けする場合は排水対策をしっかり行う。この場合、できるだけ高畦栽培とし、水田転換畑や排水不良地は深耕や暗きょなどの十分な排水対策をとる。
    4. 収穫年の潅水は控えめとし、地下水位が高いところや排水不良なところでは基本的に潅水はしない。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. この成績は現地実態調査による。
  2. 当面の対策とする。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:イチゴ「きたえくぼ」の‘先白果’発生実態と緊急対策(指導参考)

【 具体的データ 】

第3表 先白果の発生に及ぼす各地域の栽培状況の概況
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               保温〜収穫             先 白 果
 地  域  保温・収穫時期        窒素施用量 土壌条件
               までの期間             発生程度
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 静内町     ×       ×     ○     ×    2.2
 江差町    ×〜△      △     ○     ×    1.9
 上ノ国町    ×      ×〜△   ×〜△    △    1.8
 大野町    ×〜△     △〜○   ×〜△    ×    1.3
小樽市・仁木町  △       △     ×     △    1.3
 豊浦町    △〜○      ○     △    △〜○   0.9
 遠別町     ○       ○     △     △    0.5
 乙部町     ×       △     ×     ○    0.4
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保温・収穫時期は×早い 〜 ○遅い、保温〜収穫までの期間は×長い 〜 ○短い、
窒素施用量は×多肥 〜 ○少肥、土壌条件は×不良 〜 ○良として総合的に評価
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【 その他 】

研究課題名:いちご「きたえくぼ」の先白果発生要因の解明と対策ー予備試験
予算区分:道費(初動研究)
研究期間:平成8年度(平成8年)
研究担当者:中村隆一・元木征治・川岸康司・阿部珠代・生方雅男
発表論文等:イチゴ‘きたえくぼ’の先白果発生要因についての一考察(第1報)発生実態調査、北海道園芸研究談話会報、第30号、1997年

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.61