だいずの食葉性鱗翅目幼虫に対する被害許容水準
【 要約 】 食葉性害虫に対してだいずの収量が影響を受ける期間は、開花始頃から粒肥大期で、被害許容水準は葉面積率で20%である。この値を被害許容頭数に換算すると、鱗翅目幼虫が寄生を開始する7月上旬ではだいず1個体当たり1頭とみなせる。
北海道病害虫防除所 予察課 連絡先 01238-9-2080
部会名 生産環境 専門 作物虫害 対象 豆類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 北海道におけるだいずの主要害虫は、わい化病を伝播するジャガイモヒゲナガアブラムシと、生育阻害をおこすダイズシストセンチュウであり、防除法の研究、抵抗性品種の育成がおこなわれている。これに対し、食葉性害虫については研究がほとんどされておらず、防除は農家の感覚に任せているのが実態である。だいずの生育ステージ別に食葉性鱗翅目幼虫の被害許容水準を明らかにすることが求められている。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 食葉性害虫として、ツメクサガ、キタバコガ、ヨトウガ、ウワバ類、モンキチョウおよびヒメアカタテハが認められ、主体はツメクサガとキタバコガである(表1)。
  2. ツメクサガおよびキタバコガでは孵化した幼虫が蛹化するまでに品種「キタホマレ」で小葉を4枚(葉面積で230〜330cm2)摂食する。なお、それ以外の種でも概ね小葉4枚を摂食すことから、鱗翅目幼虫1頭当たりの摂食量は小葉4枚程度とみなせる。
  3. 摂食(切葉)の影響は生育ステージにより異なり、減収率は開花始頃〜粒肥大期までが大きかった。黄葉期以降では減収は認められなかった(図1、図2)。
  4. 10a当たりの収量を 200kgとし、1回に要する防除費用(2000円)との兼ね合いから、粗収益の4.2%を経済的被害許容水準と設定した場合、被害許容量は開花始期から粒肥大期で最小となる。しかし、この期間にあっても全葉の20%程度の被害まで許容できると考えられる(図3)。
     この被害許容水準を被害許容頭数に換算するとだいず1個体当たり、開花期頃で2頭以下、莢伸長最盛期(最頂葉展開期)以降では3〜4頭と推定される。また、鱗翅目幼虫が寄生を開始する7月上旬ではだいず1個体当たり1頭とみなすことができる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. ここで求めた被害許容水準は葉の食害から求めたものであり、莢を食害する害虫の場合には別途被害許容水準の設定が必要である。
  2. 生育初期の頃は理論上被害許容量が大きくなるが、その後の生育に影響があることから、生育に影響の出ない25%以内の葉面積率の食害に抑えることが必要がある。
 平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
 課題名;ダイズの食葉性鱗翅目幼虫の被害許容水準の設定(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:だいずの食葉性鱗翅目幼虫の被害許容水準の設定
予算区分:国費(植物防疫事業)
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:大久保 利道
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.139