空知管内における低蛋白米生産のための稲体・土壌の窒素指標
【 要約 】 低蛋白米生産(蛋白含有率8%以下、収量500kg/10a)のための出穂期および成熟期における稲体窒素指標は、茎葉窒素含有率ではそれぞれ1.6%、0.8%以下、窒素保有量では9±0.5kg/10a、11±0.5kg/10aである。土壌窒素指標は湛水土壌中NH4-N量(6月上旬)5〜6mg/100gである。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科 連絡先 0126-26-1518
部会名 生産環境 専門 肥料 対象 稲類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 消費者の評価を高め、安定した米生産地として発展するためには、良食味(低アミロース、低蛋白)米を安定的に生産するための土壌、栽培管理技術の確立が必要である。
 米粒中の蛋白含有率は稲体および土壌の窒素栄養と密接に関係しており、低蛋白米生産のためには適正な窒素管理が必要である。そこで一定水準の収量(500kg/10a以上)を維持しつつ低蛋白(8%以下)米を生産するための稲体・土壌の窒素指標を策定する。
 *蛋白含有率:白米について乾物%

【 成果の内容・特徴 】

  1. 出穂期、成熟期稲体の窒素栄養条件(含有率、保有量)は米粒中蛋白含有率と高い相関が認められる(図1)。また、出穂期窒素保有量は籾数と高い正の相関が、成熟期保有窒素の玄米生産効率は米粒中蛋白含有率と高い負の相関が認められる。
     以上の関係から低蛋白米生産のための稲体の窒素栄養条件(指標)は、出穂期で窒素含有率:1.6%以下、窒素保有量:9±0.5kg/10a、成熟期で窒素含有率:0.8%以下、窒素保有量:11±0.5kg/10aである(表1)。
  2. 湛水土壌中NH4-N量(移植〜6月上旬)と出穂期および成熟期稲体窒素保有量には正の相関が認められる(図2)。この関係から稲体の窒素栄養条件(指標)に対応する土壌中NH4-N量は5〜6mg/100gとなり、これを土壌の窒素指標とする(表2)。なお、これら窒素条件には地域間差が認められる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 空知管内に適用する。ただし、空知南部地域、泥炭土における指標は範囲の下限値とする。対象品種は「きらら397」である。平成5年のような低温年は除外する。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名:空知管内における低蛋白米生産のための稲体・土壌の窒素指標(指導参考)

【 具体的データ 】

表1 稲体の窒素指標
      出 穂 期         成 熟 期
    含有率(%) 保有量(kg/10a)  含有率(%) 保有量(kg/10a)
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指標値 1.6以下   9 ± 0.5    0.8以下   11±0.5
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注)空知南部、泥炭土における指標は範囲の下限値とする。



表2 土壌の窒素指標
    NH4-N
   (mg/100g)
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 指標値  5〜6
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注)湛水土壌中(6月上旬)

【 その他 】

研究課題名:北海道米の食味水準向上技術の開発 (1)低蛋白米生産技術の確立試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成8年度(平成3〜8年)
研究担当者:宮森康雄・今野一男
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.246