有機栽培等農産物の品質事例と問題点−ばれいしょ−
【 要約 】 有機農産物および慣行栽培農産物ばれいしょの品質(でん粉価、乾物率、ビタミンC含量、タンパク質含量および遊離アミノ酸含量)を比較したが、その平均値間に有意の差異は認められなかった。疫病抵抗性のあるばれいしょは、抵抗性のないものに比較して、ビタミンC含量の低下が小さかった。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・品質評価科 連絡先 01238-9-2001
部会名 流通利用 専門 食品品質 対象 いも類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 農産物品質の実態については、多種・多様な対象があることと、研究の歴史が比較的新しいため、成果や情報の蓄積が少ない。各種農産物の品質の良否を含め、農産物品質について、消費者や生産者への情報の提供の必要性が高まっている。
 ばれいしょを対象に、慣行栽培農産物および有機農産物の品質の実態を明らかにし、 栽培法の違いによる品質の変化について検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 市販並びに農家栽培のばれいしょの品質(でん粉価、乾物率、ビタミンC含量、タンパク質含量および遊離アミノ酸含量)について、栽培法別、品種別に検討した。その結果、各調査項目とも品種間に明らかな差異は見られたが、栽培法(有機栽培、慣行栽培など)間には有意な差は認められなかった(表1、タンパク質含量:図1)。
  2. 有機栽培と慣行栽培の両方を実施している農家において、2か年7対のばれいしょを試料として、調査・分析した。その結果、収量以外の項目(でん粉価、乾物率、ビタミンC含量、タンパク質含量、遊離アミノ酸含量)の平均値には、栽培法間の有意な違いは認められなかった(表2)。
  3. 上記農家のばれいしょを試料として、5回の官能検査を実施した結果、すべての調査で栽培法の異なるばれいしょが識別された。嗜好調査では、2回は有機栽培が好まれる果であったが、過半を占める3回は有意の違いがみられなかった。
  4. 品種の疫病抵抗性と品質の関係では、抵抗性のない農林1号のビタミンC含量は、無除栽培で低下した。しかし、抵抗性のある根育29号(育成系統)では、防除の有無により、ビタミンC含量に有意差は見られなかった(図2)。

【 成果の活用面・留意点 】
 無農薬栽培ばれいしょの栄養品質(ビタミンC含量)は、品種の選択により影響が異なるので、疫病抵抗性品種を選択することが望ましい。

 平成8年度北海道農業試験会議における課題名及び区分
  課題名:有機栽培等農産物の品質事例と問題点−バレイショ(追補)−(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:クリーン農産物の品質基準策定と評価法の確立
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(平成3〜7年)
研究担当者:古館明洋・目黒孝司
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.253