土壌pH調整、土壌水分管理によるジャガイモそうか病の軽減対策
【 要約 】 土壌酸度調整資材の施用により 土壌pHを5.0以下にすると、発病度で20以上の低下または防除価40以上のそうか病抑制効果が期待される。また、かん水と資材の併用は抑制効果の安定性を高める。しかし、pHを4.7以下まで低下させると 後作への影響が懸念され、pH4.5以下ではばれいしょの生育も抑制される。
北海道立十勝農業試験場・研究部・土壌肥料科、病虫科
北海道立北見農業試験場・研究部・土壌肥料科
連絡先 0155-62-2431
0157-47-2146
部会名 生産環境 専門 作物病害 対象 いも類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 ジャガイモそうか病の発病軽減対策として、土壌pH低下技術における目標pHの設定や資材の施用法、当作及び後作への影響などについて問題点の検証と技術の深度化を図るとともに資材施用時の実効的なかん水手法を確立する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 土壌酸度調整資材施用量の増加に伴ってpHは低下し、発病抑制効果が高まる。pH5.0 以下となった処理区の60%で発病度が20以上低下し、防除価も40を上回った(図1)。
  2. 硫酸第一鉄資材(フェロサンド)と硫酸アルミニウム資材(硫酸バンド)は同程度の抑制効果を示す。
  3. 表層10cmへの資材の施用により ほぼ培土全体のpHが低下する(図2)。
  4. 資材の施用によりpHが4.7〜4.8程度に低下してもばれいしょの収量、品質に影響はない(表1)。しかし pH4.5以下では萌芽遅延を引き起こし、収量や品質を低下させ、養分含有率にも影響を及ぼす。
  5. 資材を施用した圃場でもばれいしょ収穫後に耕起(プラウイング)すれば、後作への影響はほとんどない。ただし 資材施用当年のpHが4.7以下に低下すると、耕起してもpHが高まらない場合があり、後作への影響が若干懸念される(表2)。
  6. 資材施用とかん水の併用は、それぞれ単独より高い効果を示す(表3)。かん水は萌芽期に一度に25mm以上の多量かん水を行うことが有効である。かん水期間は7月末までとし、かん水開始点は pF2.3とする。かん水は茎葉の上から行う機材(レインガン、スプリンクラ、吹き上げ型チューブなど)を用いて差し支えない。
  7. 資材の施用目標値はpH5.0とし、施用対象土層を表層10cmとして 培養試験による緩衝曲線に基づき施用量を算出する。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 発病いも率15%程度を目標として、発病いも率30%程度以下の圃場に活用する。作土のpHが5.5以下の圃場への資材の施用は避ける。資材としては肥料登録のあるフェロサンドを 用いる。
  2. 生育初期のかん水は水滴の小さくなる機材やヘッドを用いる。またかん水後は病害発生に特に注意する。
平成8年度北海道農業試験会議における課題名及び区分
課題名:土壌pH調整、土壌水分管理によるジャガイモそうか病の軽減対策(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:ジャガイモそうか病総合防除法開発試験 Ⅱ.土壌環境改善による発病抑制技術の開発
予算区分 :受託
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:田村 元・竹内晴信・山神正弘・宮島邦之
発表論文等:灌水と土壌酸度調整資材施用がジャガイモそうか病発病に及ぼす影響、日本土壌肥料学会講演要旨集 42(1996)
      土壌酸度調整資材によるジャガイモそうか病の抑制効果とその残効性、日本土壌肥料学会北海道支部会要旨 (1996)

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.259