環境保全のための水田からの粘土流出程度の簡易測定と軽減対策
【 要約 】 代かき排水時に流出する粘土量を土壌の沈降性から評価し、3次メッシュ地帯区分図を作成した。粘土流出の多い地帯での軽減対策として、 (1)落水までの日数を長くする。 (2)過剰な代かきを行わない。 (3)代かき用水を最少量とすることが有効である。
北海道立上川農業試験場・研究部・土壌肥料科 連絡先 0166-85-2200
部会名 生産環境 専門 環境保全 対象 稲類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 環境保全型農業として評価の高い水田作の問題点は代かきから移植時にかけて、粘土成分を多量に含む懸濁物質が河川に流出することである。本試験は、水田より流出する粘土量の地帯区分と軽減対策について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 代かき排水時における粘土流出程度を推定するために、土壌の沈降性を評価できる簡易測定装置を考案した。蛍光灯を光源として、試験管(土壌の水懸濁液)の透過光を層位別に配置した4個の光センサーで測定し、デ−タロガ−に記録するものである。
  2. 土液比2:40で懸濁液を作成後静置し、24時間後に測定して得られた透過率の平均値を吸光度に換算した。吸光度を懸濁度と呼ぶことにした。
  3. 懸濁度と懸濁物質量及び粘土含量との間には有意な正の相関(r=0.764**、0.822**)があり、粘土の沈降性は懸濁度で評価できる。
  4. 懸濁度に基づき、粘土の流出が多い区分(C)、 少ない区分(A)、中間の区分(B)の3タイプに分けて粘土流出量による地帯別区分図を作成した(表1、図1)。
  5. 粘土の流出防止対策として、 (1)代かき後落水までの日数を長くする。 (2)過剰な代かきを行わない。 (3)代かき用水を最少量にすることが有効である。なお、代かき後落水までの日数の目安は、流出の多い地帯(C) で3〜5日、中間地帯(B) で2〜3日、流出の少ない地帯(A)で1日以上である(図2、3)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 細粒、多腐植質な水田では、懸濁物質を高く評価する可能性があるので、適用にあたっては懸濁物質についての土壌診断を実施する。
  2. 代かき後土壌が硬化し田植作業に影響を与える水田は本成績を適応しない。
  3. 区分図は代かき24時間後の流出程度を示したものである。
  平成8年度北海道農業試験会議における課題名及び区分
  課題名:環境保全に必要な水田からの粘土流出軽減対策(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:寒地水田における養分収支に基づく環境調和型施肥基準の設定試験
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成8年度(平成6年〜9年)
研究担当者:田丸浩幸・三浦 周・野村美智子・稲津 脩
発表論文等:寒地水田における土壌および養分の流出に関する研究 第1報、第2報 日本土壌肥料学会 講演要旨集、第42集、1996。

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.263