低コスト・肉質向上をめざした黒毛和種交雑種(BA種)の育成法および出荷月齢

低コスト・肉質向上をめざした黒毛和種交雑種(BA種)の育成法および出荷月齢
【要約】 BA種は、施設や管理の省力化を考慮すると、自然哺乳による放牧育成が適する。BA種を肥育すると、肉質等級、脂肪交雑からみた適正な出荷月齢は、去勢牛で26か月齢、雌牛で24か月齢である。
北海道立新得畜産試験場・家畜部・肉牛飼養科・肉牛育種科						連絡先	01566-4-5321
部会名	畜産・草地	専門	飼育管理	対象	家畜類	分類	指導

【背景・ねらい】
　アバディーンアンガス(以下アンガスと略す)は、粗飼料の利用性が高いため、北海道の飼養頭数が増加してきたが、牛肉の輸入自由化以降、肉質面で輸入牛肉との競合を余儀なくされている。このためアンガス飼養農家でも黒毛和種雄牛を交配した交雑種(以下BA種と略す)の生産が拡大している。
　BA種についてはアンガスの優れた粗飼料の利用性(放牧適性)や母牛による子育て能力(泌乳能力)、黒毛和種による肉質改善などの効果が期待できるが、その育成肥育技術についてはほとんど検討されていない。そこで、BA種の肉質の変化を、育成方法および出荷月齢から調査し、BA種に適した低コストな肥育方法を確立する。

【成果の内容・特徴】
　生後 6か月齢まで母子放牧で自然哺乳し、離乳後終牧まで放牧育成する育成方法と生後 3か月齢で早期離乳し舎飼育成する育成方法との違い、さらに24か月齢出荷と26か月齢出荷との違いが、BA種の育成期の発育成績と肥育成績に及ぼす影響について検討し、以下の結果を得た。

BA種は放牧育成において十分良好な発育が期待できることが示された。したがって、育成施設や管理の省力化を考慮すると、自然哺乳による放牧育成が適していると考えられた(表1)。
去勢牛では24か月齢出荷に比べて26か月齢出荷は、増体、飼料効率では若干劣るものの、肉質等級、脂肪交雑が改善されることから、26か月齢出荷が適していると考えられた(表2)。
雌牛では24か月齢出荷に比べて26か月齢出荷は、増体、飼料効率は去勢牛ほどではないが若干低下し、余剰脂肪が多くなり、肉質の改善効果も認められなかった。雌牛は去勢牛より早熟性で仕上がりが早いため、24か月齢出荷が適していると考えられた(表2)。

【成果の活用面・留意点】

BA種肥育牛は黒毛和種に比べ、皮下脂肪などの余剰脂肪が多い。

平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名：　交雑種(BA種)の肥育技術および牛肉の鮮度保持技術(指導参考)

【具体的データ】

表1　育成期の体重推移　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(kg)
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　　　　　　　　　　　　生時　　　　　3か月齢　　　 6か月齢　　　　9か月齢
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　放牧育成区　去勢牛　36.5±1.2a　　106.3± 7.4　209.0±11.6a　285.5±18.8a
　　　　　　　雌牛　　32.3±2.2b　　 94.9± 9.4　177.7±11.2b　237.1±12.1b
　舎飼育成区　去勢牛　35.0±3.7ab　 92.7±12.0　148.3±18.2c　219.4±24.6b
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　　　　　　　a,b,c ：各項目ごとに異文字間に有意差有り(p＜0.05)



表2　肥育成績
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　　　　　　　　　　　　　24か月齢出荷　　　　　　　　　　26か月齢出荷
　　　　　　　　　　　放牧育成区　　舎飼育成区　　　　放牧育成区　　 舎飼育成区
　　　　　　　　　　去勢牛　　雌牛　　去勢牛　　　　去勢牛　　 雌牛　　 去勢牛
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頭数　　　　(頭)　　　 3　　　　2　　　　 3　　　　　　3　　　　 3　　　　 3
開始時体重　(kg)　　 277　　　247　　　 221　　　　　304　　　 240　　　 247
終了時体重　(kg)　　 714　　　680　　　 665　　　　　739　　　 714　　　 696
通算日増体量(kg)　　1.10　　 1.00　　　1.03　　　　 0.88　　　0.96　　　0.91
1kg増体に要
したTDN量　 (kg)　　 7.0　　　6.5　　　 6.4　　　　　7.9　　　 6.8　　　 7.2
枝肉量　　　(kg)　　 424　　　411　　　 385　　　　　442　　　 436　　　 426
枝肉歩留　　(％)　　62.1　　 63.5　　　61.0　　　　 61.1　　　62.8　　　63.8
ロース芯面積(cm2)　 50.7　　 45.0　　　46.4　　　　 45.1　　　48.2　　　48.0
皮下脂肪厚　(cm)　　 3.0　　　2.8　　　 2.4　　　　　2.8　　　 3.2　　　 3.5
BMS No.　　　　　　　2.0　　　3.0　　　 2.7　　　　　4.7　　　 2.7　　　 3.0
BCS No.　　　　　　　3.7　　　3.0　　　 3.3　　　　　3.3　　　 3.0　　　 3.3
枝肉格付　　　　　B-2：2頭　B-3：2頭　B-3：2頭　　 B-4：2頭　B-3：1頭　B-3：1頭
　　　　　　　　　C-2：1頭　　　　　　B-2：1頭　　 B-3：1頭　C-3：1頭　C-3：2頭
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 B-2：1頭
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【その他】

研究課題名：交雑種(BA種)の肥育技術および牛肉の鮮度保持技術
予算区分　：道　費
研究期間　：平成5年〜8年
研究担当者：佐藤幸信、本郷泰久、杉本昌仁、川本　哲、寒河江洋一郎、宮崎　元、川崎　勉、田村千秋、塚本　達
発表論文等：

　　　　　　　「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」　P.296