豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチンの野外臨床試験
【 要約 】 Mycoplasma hyopneumoniaeの培養濾液を主成分とする不活化ワクチンの有効性 および安全性について、野外の豚を用いて検討したところ、本ワクチンを子豚に4週間 隔で2回注射することにより、豚マイコプラズマ肺炎の肺病変形成を抑制する効果が確 認され、さらにPasteurella multocidaの混合感染を抑制する。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・衛生科、養豚科
株式会社科学飼料研究所 ワクチンセンター
連絡先 0125-28-2211
043-486-5640
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 診断予防 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 豚マイコプラズマ肺炎(MPS)は、養豚の生産性を低下させる主要因の一つであり、本症に有効なワクチンの開発が切望されてきた。本研究では、1994年に全農家畜衛生研究所の岡田らが報告した、Mycoplasma hyopneumoiae(Mhp)の培養濾液を主成分とする不活化ワクチンについて、野外の豚を用いてその有効性および安全性について検討した。

【 成果の内容・特徴 】
 Mhp陽性の養豚場で飼育されていた4週齢の三元交雑子豚9腹94頭を用い、腹ごとにワクチン区と対照区の2区に分け、ワクチン区の子豚にワクチンを4週齢および8週齢の2回1ドーズ2mlを筋肉内に注射し、その安全性、免疫原性、病変形成阻止効果及び発育に対する効果について検討した。

  1. ワクチンを子豚に筋肉内注射しても臨床的な異常所見は認められなかった。また、処理区間で4週齢から8または9週齢までの発育成績に差はなく、ワクチンの安全性が示された。
  2. 血清中のMhpに対するCF抗体価は、第2回目のワクチン注射後4週目に、対照区に対して有意に上昇し、ワクチンの免疫原性が示された(図1)。
  3. ワクチン区のと殺時におけるMPSによる肺病変陽性率および面積率は、対照区に対して有意に減少し、ワクチンの注射によってMPS病変の形成を阻止または軽減することが確認された(図2)。さらに肺からのMhpの分離率および分離菌数を低減し、Pasteurella multocidaとの混合感染を抑制する効果のあることが確認された(図3、表1)。
  4. ワクチンの注射による体重30kgから90kgまでの1日増体重および飼料要求率の改善効果は明らかでなかった(表2)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験に供した不活化ワクチンは、現在製造承認の申請中であり、平成9年中に市販される見込みである。
  2. 本ワクチンによる発育改善効果は、MPSの肺病変がほぼすべての肥育豚に認められる養豚場において確認されているので(小此木ら、1996)、その利用にあたってはMPSおよびMPSが関与した呼吸器感染症による経済的被害を把握した上で使用するのが望ましい。
  3. ワクチンは生物学的製剤であり、獣医師の指示により使用すること。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名:豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチンの野外臨床試験(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:豚マイコプラズマ肺炎不活化ワクチン「試作品」の野外臨床試験
予算区分 :共同研究(民間)
研究期間 :平成8年度(平成7年)
研究担当者:仙名和浩・及川学・米道裕彌・梶野清二・小此木博
発表論文 :

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.317