フライアッシュを主成分とする土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止
【 要約 】 新しい土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止効果を検討した。土の硬さが改善され、泥ねい化防止効果は認められた。しかし、仕上がりの状態が施工条件で異なり、それにともない表面の傷み(軟化)の状態も異なる。
北海道立新得畜産試験場・家畜部・肉牛飼養科
北海道立滝川畜産試験場・研究部・養豚科
連絡先 01566-4-5321
0125-28-2211
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 農業施設 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 畜舎周辺の泥ねい化は、不衛生と作業性の低下により家畜の飼養管理に直接影響するばかりでなく、環境汚染の原因にもなり、農場の景観も損なう。そこで、新しい土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止効果を検討した。
 供試資材はフライアッシュを主成分とし、土と反応してエトリンガイトとなり、土壌を硬化する。新得畜試では肉牛体測所パドックを用い、試験1では処理区と無処理区を比較し、試験2では排水材(T:フェルト状,K:プラスティック板状)を組み合わせた処理+T区、処理+K区と無処理区を比較した。資材使用量は30cmの深さの土重量の3%である。処理区の施工手順は火山灰追加〜資材散布〜混合〜(排水材等埋設)〜整地〜散水〜転圧(3tonローラ)である。
 滝川畜試では分娩豚舎子豚パドックを用い、試験1では古い表土のままで耕起〜資材散布〜混合〜整地〜散水〜転圧(550kgローラ)の順で施工し、処理区と無処理区を比較した。試験2では古い表土30cmを剥いで同量の火山灰または重粘土と置換し、資材散布〜混合〜整地〜転圧(3tonローラ)の順で施工し、2種類の土壌を比較した。資材使用量は試験2の重粘土区で30cmの深さの土重量の5%、他は3%である。

【 成果の内容・特徴 】
<新得畜試>

  1. 施工直後の測定では両試験とも、無処理区に比べて処理区の土壌の硬度が大きく、とくに試験1では山中式硬度で38mmに達し、土壌硬化材による土の硬さの改善効果は認められた。しかし、粗孔隙量は増しても透水性の改善効果は認められず、試験2で地中に設置した排水材による排水性の改善効果も認められなかった。(表1、表2)
  2. 越冬前後における蹄没跡の深さでも、無処理区に比べて処理区の方が浅く、土壌硬化材の泥ねい化防止効果は明らかであった(図1)。また、使用感想の調査でも全員が「やや効果あり」または「かなり効果あり」と回答した。
  3. ただし、1年後の土壌の硬度をみると、試験1では地表面の硬度が無処理区並に低下し、その傷んだ層の下に硬い面(山中式硬度で30mm以上)が残っていた(表3)。
<滝川畜試>
  1. 処理区の土壌硬度が全般に大きく、土の硬さの改善効果は認められた。透水性の改善効果については、土壌サンプル分析値と現場透水試験結果が逆転し、不明であった。(表1、表2)
  2. 降雨後における泥ねい化・湿りの面積は処理区の方が著しく少なく、泥ねい化防止効果は明らかであった。(図2)
  3. 火山灰と重粘土の比較では、5%混合の重粘土区の方が硬く仕上がったが、1か月の使用期間中に3%混合の火山灰区並となった。(図3)
 以上のとおり、土の硬さが改善され、泥ねい化防止効果は認められる。

【 成果の活用面・留意点 】
 仕上がりの状態が施工条件で異なるので、適時散水しながら十分に転圧する。本試験の条件が限定されていることから、施工法・永続性等について今後さらに検討する必要がある。

平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:土壌硬化材によるパドックの泥ねい化防止(指導参考)

【具体的データ】

表1 施工直後の土壌サンプルの分析値(深さ5cm)
含水比(%)乾燥密度
(g/cm3)
粗孔隙量
(%)
飽和透水係数
(cm/s)
有機物含有量
(%)
新得・試験1処理区17.11.4516.42.99×10-30.3
無処理区18.91.5611.24.13×10-30.1
滝川・試験1処理区30.61.1410.61.08×10-46.3
無処理区34.41.271.53.37×10-54.8
 注) 土性:新得 壌質砂土(LS)、滝川 軽埴土(LiC)

表2 施工直後の山中式土壌硬度と現場透水試験結果
 硬度(mm)ベーシック
インテークレート
(mm/h)
透水係数への
換算値(cm/s)
深さ0cm10cm
新得試験1処 理 区38311.614.48×10-5
無処理区13222.085.79×10-5
試験2処理+T区29251.985.51×10-5
処理+K区25262.978.25×10-5
無処理区22170.722.00×10-5
滝川試験1処 理 区31280.092.47×10-6
無処理区28180.561.54×10-5

表3 1年後の地表面の山中式土壌硬度 (mm)
 湿潤時乾燥時
新得試験1処 理 区10-3118-34
無処理区611
試験2処理+T区2325
処理+K区2222
無処理区1413
滝川試験1処 理 区2227
無処理区2026
1)新得:湿潤時 8/19、乾燥時 10/23
滝川:湿潤時 10/15、乾燥時 11/1
2)新得・試験1 処理区:地表面-地中の硬い面

【 その他 】

研究課題名:土壌改良剤によるパドックの泥ねい化防止
予算区分:受託
研究期間:平成8年度(平成7〜8年)
研究担当者:寒河江洋一郎・山崎 昶・裏 悦次・塚本 達
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.323