無人ヘリコプタによる小麦雪腐病防除薬剤散布実用化技術
【 要約 】 小麦雪腐病を防除するために産業用無人ヘリコプタを利用し、根雪開始前に1回ないし2回、イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fを散布量および希釈倍率を6倍(8L/ha)ならびに12倍(16L/ha)とし、秋播小麦に散布すると、地上散布と同等の防除効果が得られる。
北海道立中央農業試験場・農業機械部・機械科
北海道立上川農業試験場・専門技術員室
連絡先 01238-9-2001内線(341)
0166-85-2200
部会名 総合研究
(農業物理)
専門 機械、作物病害 対象 麦類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 北海道の山間部の多雪地では、小麦雪腐病の防除は、根雪直前の天候が不安定で降雪と降雨を繰り返すことが多く、トラクタが圃場に入ることができないため、適期防除を逸すること多い。産業用無人ヘリコプタは、このような圃場条件に左右されることなく防除作業を行え、傾斜地への適応性も高く、劣悪な圃場条件に適応した散布技術として期待される。そこで、産業用無人ヘリコプタ用に開発されたイミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fについて散布特性、防除効果を確認し、実用性の検討を行った。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 産業用無人ヘリコプタの防除作業は一定の飛行速度で薬液の散布を行う。薬液散布時の平均飛行速度は15.6〜22.0km/hで、設定飛行速度との比は0.89とやや低いが、設定散布量に対する実散布量の比は0.9〜1.5(平均値1.1)であり、水稲と同様の作業性能を示す。
  2. 薬液の付着状態は、散布量8L/haに対し倍量の16L/haが粒子数、被覆面積率ならびに付着指数で優っており、付着粒子径は倍量散布よりも8L/ha散布が大きい。雪腐病の防除効果には年次間差がみられるが、雪腐病の発病度(平成6年)は、産業用無人ヘリコプタによる1回散布の場合、散布量8L/haで19.5、倍量散布で16.5、2回散布ではそれぞれ15.5、13.5と、慣行散布の12.7と同等の値であり、2ヶ年の結果からイミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fの防除効果は有効と判断される。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 雪腐病防除の基本である根雪直前の散布を守る。
  2. 散布後から根雪までの気象の経過によっては再散布を行う。
  3. 産業用無人ヘリコプタによる防除は登録薬剤に限定される。
  4. イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤Fは産業用無人ヘリコプタ用の小麦雪 腐病防除薬剤として登録を申請中である。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:無人ヘリコプタによる小麦雪腐病防除薬剤散布実用化技術(指導参考)

【 具体的データ 】
表1 散布飛行諸元および散布量
年度散布回数
(回)
希釈倍率
(×)
設定散布量
(L/ha)
散布量(L/区)飛行速度(km/h)飛行高度
(m)
ノズル吐出量
(L/ha)
設定実測設定実測
H61681.21.701.4221.015.60.744.11.4
12162.42.901.2121.016.60.793.41.4
2680.60.550.9221.016.30.784.41.4
12161.21.080.9021.019.90.954.31.4
H71681.21.211.0121.022.01.052.21.4
12162.42.431.019.518.80.962.61.3
2680.60.901.5019.517.60.902.61.3
12161.21.321.1018.017.60.983.21.2
平均値1.130.89

表2 散布薬剤粒子の付着状況(感水試験紙表面)
年度散布回数
(回)
希釈倍率
(×)
設定散布量
(L/ha)
付着粒子数
(個/㎝2)
平均径・VMD
(μm)
被覆面積率
(%)
付着指数
H616846.62212.0A6
1216130.81813.8A7
26866.32052.1A6
1216117.71873.4A7
H716814.81650.3A4
121683.41391.2A6
2687.52860.5A4
121650.41390.8A5

表3 防除効果
年度処理区散布回数
(回)
希釈倍率
(×)
設定散布量
(L/ha)
発病度備   考
H6無人ヘリコプタ散布16819.5病原菌割合
褐色小粒菌核:85%
黒色小粒菌核: 5%
紅色雪腐病 :10%
イミノクタジン酢酸塩・メプロニル水和剤
フルアジナム水和剤(12月2日)
121616.5
26815.5
121613.5
地上散布 500100043.0
慣行散布   12.7
無散布   43.0
H7無人ヘリコプタ散布16835.0病原菌割合
褐色小粒菌核:90%
黒色小粒菌核: 5%
紅色雪腐病 : 5%
イミノクタジン酢酸塩・トルクロホスメチル水和剤F
121635.0
26823.8
121626.3
地上散布1500100035.0
2500100022.5
無散布   35.0

【 その他 】

研究課題名:産業用無人ヘリコプタによる秋播小麦雪腐病防除効果確認試験
予算区分:受託
研究期間:平成8年度(平成6〜7年)
研究担当者:大山 毅・玉木哲夫・尾崎政春*・道場三喜雄*・竹中秀行**
*:上川農業試験場、**:根釧農業試験場
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.332