農協や第3セクタ−による農作業受委託の地域システム化
【 要約 】 労働力や資本の制約を打ち破り家族農業経営の新たな展開をはかる方法として農作業受委託を手段とした農業経営の専門化と規模拡大の実現がある。受委託体制構築において、地域主体(農協や第3セクター)は、分化・専門化した農業経営と受託組織を共通の指針のもとで安定的に統合することが重要となる。
北海道立十勝農業試験場・研究部・経営科 連絡先 0155-62-2431
部会名 総合研究(農業経営) 専門 経営 対象 農業組織 分類 指導

【 背景・ねらい 】
農産物価格の低落のもとで、農業経営の持続的展開は、労働および資本の制約により壁に突き当たっている。農業国際化に対応し、家族農業経営の展開を積極的に実現するため、受託組織の確立により地域的な農作業受委託システムを構築する条件を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 農業経営の新たな展開手段として、農作業受委託による経営構造再編がある。農業経営は、ア.農産物の生産工程の一部を、イ.将来にわたり継続して、ウ.当該作業を全面的に委託することにより、有利な部門への専門化と集中した労働・資本の投入を実現し、規模の経済性・専門化の経済性を発揮することができる。このような展開は、受託側の高度で安定した作業能力の形成と持続的な受託体制の確立に裏打ちされる必要がある。
  2. 鹿追町農協による畑地型酪農経営を対象とした飼料作受委託の事例では、農協の受託組織設置と酪農経営に対する飼料作作業の全面的委託誘導のもとで、酪農経営の委託増大による規模拡大効果が認められた。さらに全面的委託への移行を通じて飼養管理への専門化と飼料作機械の非保有により経済効果の増幅(生産費の低下)が可能と考えられた。
  3. 地域的な受委託体制の構築と農業経営の展開には、農協や第3セクター等の地域主体が、受委託による長期的な利益形成を前提に、農業経営と受託組織を安定的に統合することが重要である。地域主体に必要な機能は次のように整理できる:ア.マスタープラン策定により受委託による地域農業展開の指針を明確化し、農業経営の委託目的の統一をはかること、また指針に適合した受託体制を整備すること、イ.マスタープランに従い農業経営の委託需要拡大と経営展開を誘導すること(構造的調整)、および受委託の運営や監視を行うこと(短期的調整)、ウ.需要形成に先立って先行投資の必要となる受託組織に対し、経済的な安定化措置を講じること。

【 成果の活用面・留意点 】
 本研究は畑地型酪農経営を対象に受託組織構築による受委託の展開を検討対象としたが、受委託システムの具体的形態は、地域の自然的・社会的環境、農業経営の形態、地域農業の展開方向によって必ずしも固定的ではない。草地型酪農経営においては、技術体系が異なること(畑地型酪農にはない放牧の存在)を考慮して適用を検討する必要がある。

平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分
課題名=受託組織の確立による農作業受委託の地域システム化(指導参考)

【 その他 】

研究課題名:受託組織の確立による農作業受委託の地域システム化
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:岡田直樹
発表論文等:

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.359