圧縮空気によるほうれんそうの下葉調製装置
【 要約 】 調製装置の構造はノズルから噴射する圧縮空気でほうれんそうの下葉および子葉を取り除く方式である。数組の透過型光センサでほうれんそうの位置を検出し、パソコンで圧縮空気の噴射時間などを制御する。2品種のほうれんそうの下葉および子葉の水平方向および垂直方向の脱葉力は、子葉では100g以下、下葉では500g以下である。調製装置の葉の除去率はTジェットノズルよりブローノズルが高く、良好である。
北海道立中央農業試験場・農業機械部・機械科 連絡先 01238-9-2001
部会名 総合研究(農業物理) 専門 機械 対象 葉菜類 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 北海道におけるほうれんそうの栽培面積は、昭和55年の883haから平成6年の1550haにほぼ倍増している。ほうれんそうはハウスや雨よけ栽培が中心であり、栽培の多くの場面で手作業に頼っており、特に収穫、調製、包装などの作業は多くの人手と手間を必要としている。このようなことから、ほうれんそうの収穫・調製作業を対象に軽労働化をはかることを目的に下葉の調製装置を試作し、その性能を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 調製装置は、ノズルから噴射する圧縮空気で子葉および下葉を吹き飛ばして取り除く方式である。ほうれんそうの位置を数組の透過型光センサで検出する。ノート型パソコンで作動するセンサの選択、圧縮空気の噴射時間ならびに噴射間隔などを設定する。また、設定条件およびセンサの作動状態は、ノート型パソコンの画面に表示される。
  2. Tジェットノズルは空気が扇状に拡散し、有効な空気圧の到達範囲はノズル正面に限られ、空気圧の分布は山形となるが、ブローノズルは空気圧の到達距離が遠く、空気圧は台形状に分布し拡散が少ない。Tジェットノズルの除去率は、子葉で51.3〜65.0%、下葉では17.5〜43.7%と低いが、ブローノズルは、設定噴射時間0.5秒の時、除去率は子葉で64.5〜67.5%、下葉で61.7〜67.9%である。噴射時間を1秒にした場合、子葉および下葉の除去率は97%程度に高まる。
  3. 2品種のほうれんそうの子葉ならびに下葉の脱葉力は垂直方向より水平方向がやや大きく、子葉の脱葉力は100g以下、下葉の脱葉力は500g以下である。また、2品種のほうれんそうの葉柄の折れ力は、葉長が大きくなるほど増加する傾向を示す。
  4. 圧縮空気による下葉などの調製では、不良の原因は、子葉や下葉が枯れている場合、ノズルと対象物との距離が離れすぎて噴射圧力が不足した場合、圧縮空気の作用位置が適切でない場合などである。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 子葉および下葉の脱葉力ならびに葉柄の折れ力は限られた品種、作型の値である。
平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:圧縮空気によるほうれんそうの下葉調製(研究参考)

【 具体的データ 】
表1 調製装置の脱葉性能
実験No.ほうれんそうノズル吐出時間
(sec)
除去率(%)
品種種類個数間隔子葉下葉
トニックTジェット100.151.335.0
トニックTジェット100.552.543.7
サマーワールドTジェット100.565.017.5
トニックブロー70.567.561.7
トニックブロー40.564.367.9
トニックブロー41.096.998.4
トニックブロー51.010.614.4
注)除去率=(1.0×A+0.75×B+0.50×C+0.25×D+0.0×E)/(A+B+C+D+E)
A:除去率100%の本数、B:除去率75%の本数、C:除去率50%の本数、D:除去率25%の本数、E:除去率0%の本数
供試本数:14〜28本、コンプレッサ設定圧力:10kg/cm2

表2 調製不良の原因
原 因割合(%)
葉の枯れ38.2
不完全脱落20.6
空気量不足5.9
噴射圧不足26.5
作用位置が不適切8.8

【 その他 】

研究課題名:ほうれんそう収穫調製システムの開発
予算区分:補助
研究期間:平成8年度(平成5〜7年)
研究担当者:玉木哲夫
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.397