非破壊手法によるメロンの果肉硬度の推定
【 要約 】 非破壊手法によりメロン内部の成熟度や収穫時期を判定するため、特に歯ご たえに関与する果肉硬度の推定手法を開発した。果肉硬度は、赤道部位よりやや下の果 皮色、赤道部位の果皮の歪み応力、透過光の分光特性値(750/820nm)で推定が可能である。
北海道立中央農業試験場・農業機械部・機械科連絡先 01238-9-2001
部会名総合研究(農業物理)専門機械対象果菜類分類研究

【 背景・ねらい 】
 メロンでは生育日数、果皮色、果皮硬さ、香などを収穫時期の目安としており、食べ 頃の判定は糖度、果肉の硬さ、果肉色などを指標としている。本試験は非破壊手法によ り内部の成熟度、収穫時期の判定を明らかにすることを目的とし、特に歯ごたえに関与 する果肉硬度を非破壊手法(果皮色、果皮の歪み応力、透過光の波長など)により検討 を行う。

【 成果の内容・特徴 】

  1. メロン は収穫ステージが進むほど果皮色の色度b値(黄青軸)が増加する。
  2. 果皮硬度は未熟果は3.3kg/cm2、適期果は3.3kg/cm2、過熟果は3.0kg/cm2である。 果肉硬度は各々1.3kg/cm2、1.1kg/cm2、0.7kg/cm2であり、年次間差は少ない(表1)。
  3. 果肉硬度は赤道部位近辺の1mm歪み応力値との間に高い相関が認められる(表2)。
  4. 果実の透過光スペクトルは738nm、750nm、820nm付近にピークを示し、特に過熟果 は738nmのピーク値が大きい。これらの波長の比を分光特性値とすると、赤道部位の 果肉硬度と分光特性値738/820nmとの間に高い相関が認められる(表3)。
  5. 果皮色は部位4、歪み応力値は測定が容易な部位3、分光特性値(750/820nm)が最 も推定誤差が少なく(表4)、果皮色の色度b値、歪み応力値並びに分光特性値を説 明変数とするメロンの果肉硬度を推定する重回帰式は、Fp=1.551−0.0294b4+ 0.0958σm−1.337P750/820で示される。ただし、Fp:果肉硬度(kg/cm2)、b4:部位 4の果皮色、σm:1mm歪み応力値(kg/cm2)、P750/820:分光特性値。推定値は年次 や収穫ステージに起因する個体差の影響が認められるが、硬度0.5〜1.5kg/cm2の範囲 で良い一致を示した(図1)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 赤肉系メロン(夕張キング)の推定式であり、青肉系や他の赤肉系品種への適応性の 検討が必要である。
  2. 産地、年次、作型、個体差に対する適応性の拡大、測定波長域の拡大による予測精 度の向上が必要である。
  3. 非破壊手法でメロンの果肉硬度を高精度に推定できたが、個体差の影響を低減する 方法並びに他品種への適応性についてはさらに検討が必要である。

平成8年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:非破壊手法によるメロンの果肉硬度の推定(研究参考)
表2 歪み応力値と果皮・果肉硬度の相関係数

【 その他 】

研究課題名:農産物の熟度・内部形状識別装置の開発
予算区分:道費
研究期間:平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:大山 毅
発表論文等:なし

        「平成9年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.400