ながいも催芽条件およびヒートパネル利用による簡易催芽装置

[要約] キュアリングは種いもの減耗率10〜15%程度を終了の目安とし、15〜25℃で行うのが適当であった。催芽処理は、20〜22℃の範囲で種いもの部位別に分けて行うのが望ましい。植え付け後の不萌芽は催芽処理後の順化処理で軽減できる。これらをふまえて、ヒートパネルを利用してキュアリングから催芽処理までを安定した条件下で行える簡易な催芽装置を開発した。
北海道立十勝農業試験場・研究部・園芸科
十勝農業協同組合連合会、北海道電力株式会社、株式会社テクセル
連絡先 0155-62-2431
部会名 作 物 専 門 栽 培 対 象 根菜類 分 類 指 導

[背景・ねらい]

ながいものキュアリングおよび催芽処理は、現在ビニールハウスを利用して行っている農家が多いが、温度のコントロールをハウスの開け閉めにより行っているため管理面での負担が大きい。ながいものキュアリングおよび催芽処理の省力安定化を目的として、定温庫など温度制御可能な場所でのキュアリングおよび催芽条件を検討する。また、ヒートパネルを利用して一定温度に制御できる簡易的な催芽装置を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. キュアリングの終了は、種いもの減耗率10〜15%程度を目安とし、温度は、15〜25℃で8〜12日程度を目安にするのが適当である(表1)。
  2. 催芽温度は、萌芽ぞろいが良好であることと植付適期が1週間以上確保できることから、20〜22℃が適当である(図1)。
  3. 種いも部位による萌芽の早さは、温度に関係なく「首」>「尻」>「胴」の順である(図2)。
  4. 一定温度条件で催芽処理した場合、温度が高いほど圃場での萌芽率が低下するが(表2)、植え付け前の順化処理により萌芽率が向上する(表3)。
  5. 催芽装置は、熱容量700W/枚のヒートパネルを使用し、キュアリング時に通気性シート、催芽処理時に非通気性シート(ビニールまたはアルミ蒸着タイプ)を使用した。この装置を用いたキュアリングおよび催芽処理は、ビニールハウスでの方法と比べて安定的かつ省力的である(表4)。
  6. 制御用温度センサの位置は、ヒートパネルの過熱を防止し装置内温度較差を軽減することから、最下段の中央部に設置するのが適当である。
  7. 催芽処理時にアルミ蒸着シートを使用すると、装置内温度較差が改善される。

 

[成果の活用面と留意点]

  1. 定温庫など、温度制御可能な場所でのキュアリングおよび催芽処理に応用できる。ただし、一定温度条件で催芽処理した場合には、圃場での不萌芽を防止するため植え付け前に順化処理を行うのが望ましい。

  2. ヒートパネル催芽装置は、直射日光の当たる場所や極端な低温になる場所では設定温度に制御できないことがあるので、使用場所としてはD型ハウス、車庫、倉庫などを利用する。

 

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名および区分

課題名:ながいも催芽条件の検討およびヒートパネル利用による簡易催芽装置の開発(指導参考)

 

[具体的データ]

表1.キュアリング時の温度条件による減耗率10%になるまでの日数

温度

日数

15℃

12日

20℃

8〜10日

25℃

6〜8日

30℃

4日前後

注)減耗率10%は、キュアリング終了の目安

表2.催芽温度による圃場における萌芽率のちがい

年次 催芽温度
(℃)
萌芽率1)
(%)
平8 15.0 98
19.2 94
23.0 77
平9 20.0 86
25.0 79
1.平8=7/22   2.平9=7/13調査

表3.順化処理の効果

試験区1) 萌芽率1)
(%)
順化なし 79
低 温 95
低 湿 度 100
100
注1)低温=15℃に下げる 低湿度=無加湿 光=4,000ルクス照射
注2)7/13調査

 

図1.温度と植え付け適期および芽のそろいの関係

 

図2.温度と植え付け適期および芽のそろいの関係

 

表4.ヒートパネル催芽装置とビニールハウスによる催芽処理の比較

項 目

ヒートパネル催芽装置(D型ハウス設置時)

ビニールハウス

制御可能温度

通気性シート使用時:最高20

ビニールシート使用時:最高23

アルミ蒸着シー使用時:最高25

細かい温度のコントロールは困難。

温湿度のコントロール法

温度:目標温度にセットするのみ

湿度:キュアリング時は通気性シートをかける。催芽時はビニールまたはアルミ蒸着シートをかけて、水盤に水を入れる。

温度:基本的にハウスの開け閉め

湿度:催芽処理時はムシロなどの被覆資材に水をかける。

期間中の管理

催芽処理中は、適宜水盤に水を補給する。

天候に合わせてハウスの開け閉め。催芽処理中は適宜水をかける。

 

[その他]

研究課題名:ヒートパネル利用によるナガイモ催芽技術の確立

予算区分:共同(民間)

研究期間:平成9年度(平7〜9年)

研究担当者:温水友紀・日下孝人・大村純一**・堤正弘***・石川光浩****

*:十勝農業試験場、**:十勝農業協同組合連合会、***:株式会社テクセル、

****:北海道電力(株)総合研究所

発表論文等:北海道園芸研究談話会報(第30号)掲載予定