耐冷性の強いコンバイン収穫向きだいず新品種候補系統「十育227号」 | |||||||
[要約]「十育227号」の子実は褐目中粒で、「キタムスメ」に比較して成熟期が約1週間早く、収量は同品種並であり、耐冷性はやや優る。耐倒伏性は「キタムスメより強く、密植栽培による増収効果が大きい。裂莢性は難で、裂皮粒の発生は少ない | |||||||
北海道立十勝農業試験場・研究部・豆類第一科 | 連絡先 | 0155-62-2431 | |||||
部会名 | 作物 | 専門 | 育種 | 対象 | 豆類 | 分類 | 普及 |
[背景・ねらい]
北海道で栽培される大豆の褐目品種には「キタムスメ」と「北見白」があるが、いずれも耐冷性が強いことから、生育期の気温が低い地帯で栽培される。しかし、これら品種の熟期は中生のため、年により成熟期に達しないことや、収穫前に降霜や降雪に遭遇することがあり、収量や品質の低下とともに、収穫作業に支障をきたす場合が少なくない。また、こうした地帯ではコンバイン収穫に必要な立毛乾燥期間が十分確保されず、コンバインの導入による大豆栽培省力化の大きな障害となっており、熟期の早い耐冷性品種の開発が強く望まれていた。
[成果の内容・特徴]
1.「十育227号」の子実は褐目中粒で、安定多収の「キタムスメ」に比較して成熟期が 約1週間早く、中生の早である。
2.収量は「キタムスメ」並である。
3.耐冷性は「キタムスメ」よりやや優る。
4.耐倒伏性は「キタムスメ」より強く、密植栽培による増収効果が大きい。
5.裂莢性は「キタムスメ」の易に対し難であり、コンバイン収穫適性が高い。
6.裂皮粒の発生が少ない。
[成果の活用面・留意点]
1.北海道の十勝(中央部を除く)、網走、上川、留萌地域およびこれに準ずる地帯を対象 に「キタムスメ」の大半と「北見白」に置き換えて普及を進める。
2.ダイズわい化病抵抗性は弱なので防除を徹底するとともに、ダイズシストセンチュウ 抵抗性も弱なので、発生圃場への作付けは避け、適正な輪作のもとで栽培する。
平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:だいず新品種候補系統「十育227号」(普及奨励)
[具体的データ]
表1.普及見込み地帯における農試および現地試験成績(平成6〜9年)
地帯区分(支庁) | 系統名 または 品種名 |
成 熟 期 (月日) |
倒 伏 程 度 |
主 茎 長 (cm) |
莢 数 (/株) |
子 実 重 (kg/a) |
対 比 (%) |
百 粒 重 (g) |
品 質 |
Ⅰ、Ⅱ(網走) | 十育227号 | 10. 6 | 微 | 65 | 74 | 31.9 | 104 | 27.3 | 2中 |
キタムスメ | 10.13 | 中 | 83 | 68 | 30.6 | 100 | 29.4 | 2上 | |
Ⅱ(十勝・上川・留萌) | 十育227号 | 10. 5 | 微 | 57 | 76 | 25.8 | 97 | 27.1 | 2下 |
キタムスメ | 10. 1 | 少 | 75 | 72 | 26.7 | 100 | 29.1 | 2中 | |
Ⅲ(上川) | 十育227号 | 9.29 | 少 | 62 | 93 | 37.2 | 102 | 27.0 | 2中 |
キタムスメ | 10. 6 | 中 | 84 | 83 | 36.6 | 100 | 28.7 | 2下 |
表2.耐冷性に関する試験成績(平成6〜9年)
系統名 または 品種名 |
莢 数 (%) |
一莢 内 粒数 (%) |
百 粒 重 (%) |
子 実 重 (%) |
成 熟 期 (月日) |
莢 数 (/株) |
子 実 重 (kg/a) |
対 比 (%) |
百 粒 重 (g) |
十育227号 | 91 | 81 | 97 | 71 | 10.13 | 77 | 28.2 | 103 | 23.7 |
キタムスメ(強) | 90 | 82 | 88 | 63 | 10.17 | 73 | 27.4 | 100 | 24.7 |
トヨコマチ | 100 | 77 | 76 | 52 | 10.12 | 52 | 22.1 | 81 | 28.2 |
トヨムスメ(中) | 55 | 69 | 71 | 28 | 10.19 | 53 | 22.0 | 80 | 28.9 |
表3.密植栽培適応性検定試験成績(平成7〜9年)
系統名 または 品種名 |
栽 植 密 度 |
成 熟 期 (月日) |
倒 伏 程 度 |
主 茎 長 (cm) |
主 茎 節 数 |
分 枝 数 (/株) |
莢 数 (/m2) |
子 実 重 (kg/a) |
対 比 (%) |
百 粒 重 (g) |
十育227号 | 標準 | 9.29 | 無 | 51 | 10.5 | 2.3 | 596 | 30.3 | 100 | 27.4 |
密植 | 9.30 | 少 | 65 | 10.6 | 1.2 | 788 | 38.9 | 128 | 27.6 | |
キタムスメ | 標準 | 10.9 | 少 | 75 | 12.2 | 2.4 | 552 | 32.3 | 100 | 30.1 |
密植 | 10.9 | 中 | 88 | 12.0 | 1.3 | 719 | 34.7 | 107 | 30.6 |
[その他]
研究課題名:新品種育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:平成9年度(昭和58年〜平成9年)
研究担当者:湯本節三、松川勲、土屋武彦、佐々木紘一、酒井真次、紙谷元一、伊藤武、
白井和栄、田中義則、冨田謙一、黒崎英樹、角田征仁、山崎敬之、折原千賀
発表論文等:大豆の障害型冷害に関する研究 第1報 育種・作物学会北海道談話会会報 35:108-109(1994)、 第2報 同会報 36:110-111(1995)