ナガチャコガネの性フェロモンを利用した防除法
[要約]ナガチャコガネの性フェロモン物質の構造を解明し、そのラセミ合成品(Z)-7,15-hexadecadien-4-olideを用いた性フェロモントラップを開発した。これにより、ナガチャコガネの発生消長および発生状況を簡易に調査できる。さらに、本剤はハスカップでのナガチャコガネの大量誘殺法に利用できる。
北海道立中央農業試験場・病虫部・害虫科
農環研・環境生物部・昆虫管理科・昆虫行動研究室
連絡先 01238-9-2001
0298-38-8311
部会名 生産環境 専門 作物虫害 対象 昆虫類 分類 指導

[背景・ねらい]
 ハスカップやチャの重要害虫であるナガチャコガネの性フェロモン物質の構造を解明し、合成性フェロモンを利用した性フェロモントラップ及び大量誘殺法による防除法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1.ナガチャコガネの性フェロモン物質を、雌成虫のヘキサン抽出物中から生物検定をしながら各種クロマトグラフィーにより単離し、その化学構造を、GC−MS、キラルカラムに よるHPLC、NMR分析により、(Z)-7,15-hexadecadien-4-olideと同定した。
2.本物質のラセミ合成品で誘引活性がみられ、天然物と異なる光学異性体には誘引性および誘引阻害性はみられない。また、幾何異性体(E-異性体)には誘引阻害効果があり、Z-異性体に対して1%までの混入率では誘引性は低下しないが、これを超えると低下する(表1)。
3.誘引製剤として、白色セプタムに合成性フェロモン10mgを添加した場合に最も誘引数が多く、市販のコガネコールトラップやSEファネルトラップ(コガネムシ仕様)で捕獲効率が良好である。
4.性フェロモントラップは、雄成虫の発生時期を簡易に捉えることができ、圃場での発生の有無の確認、発生状況の把握に有効である(図1)。
5.ナガチャコガネの雄の比率を低下させると、雌の交尾率は大きく低下する。
6.大量誘殺法として、合成性フェロモン10mgを付けたトラップあるいはテックス板(DDVPD0.5g添加)を10a当り100個設置した場合に、補正密度で前者は33.4、後者では13.9〜21.2となり、次世代の密度低減効果が認められた(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1.性フェロモントラップは、圃場における発生消長や発生状況の簡易的調査に活用する。
2.合成性フェロモンを利用した大量誘殺法は、ナガチャコガネの防除に活用する。
3.大量誘殺法については、剤型・処理方法を更に検討するとともに、農薬登録が必要である。

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:ハスカップのナガチャコガネの性フェロモンを利用した防除法の開発(指導参考)

[具体的データ](略)

[その他]
研究課題名:「性フェロモンを利用した新防除技術の確立」、(及び「チャおよびベリー類のナガチャコガネの性フェロモンの開発」、農環研・北海道・信越化学との共同、平成5〜6年)
予算区分:道費 研究期間:平成9年度(平成5〜8年)
研究担当者:柿崎昌志(北海道中央農試)、杉江 元・野口 浩(農環研)
発表論文等:Identification of a sex pheromone component of the yellowish elongatechafer, Heptophylla picea Motschulsky (Coleoptera: Scarabaeidae). Appl. Entomol.Zool.33(1):5-10.(1998).
特許 第2654514号 「ナガチャコガネの誘引剤」、1997年5月30日登録