りんご「ハックナイン」の果実外観品質向上のための暫定的窒素施肥法

[要約] りんご「ハックナイン」の収穫期果実の地色・着色を改善するには、8月上旬に葉診断を行い、葉中窒素濃度を2.21.8%程度(開発したハックナイン用葉色板で6.05.0程度)に維持する必要がある。葉中窒素濃度を低下させるには、とりあえずは無窒素栽培が有効で、それにより外観品質は向上する。

北海道立中央農業試験場・環境化学部・土壌生態科

            果樹部・果樹1科

連絡先

01238-9-2001

部会名

生産環境

専門

肥 料

対象

果樹類

分類

指 導

[背景・ねらい]

 りんご「ハックナイン」は樹勢が強く、窒素の吸収過多となり、果実の着色不良になりやすい。このため収穫の遅れや外観品質の低下を招き、市場での評価を下げている。そこで、「ハックナイン」の果実外観品質向上のための窒素栄養診断法、基準及び適正な窒素施肥量を明らかにする。

 

[成果の内容・特徴]

1.収穫期果実の地色・着色程度を、精度良く可能な限り早期に予測しうる葉中窒素診断時期は8月上旬である(表1)。

2.収穫期果実の地色・着色程度の良好な範囲をそれぞれ3.5、6.5程度以上とした時、8月上旬の葉中窒素濃度は2.2%程度以下(新たに開発したハックナイン用葉色板で、葉色値6.0以下)に維持する必要がある(図1)。なお、8月の降水量が多く、排水不良になるような場合を除く。

3.無窒素処理は、8月上旬の葉中窒素濃度を低下させ、収穫期果実の外観品質を改善する(表2)。

4.しかし、無窒素処理により、8月上旬の葉中窒素濃度が1.8%以下(葉色値5以下)になると、収量、新梢停止率等が悪化すると推定される(表3)。

5.以上の結果を基に、ハックナインの成木期における良質果実(外観品質)生産のための暫定措置として、葉中窒素濃度が1.8%程度以上の場合には無窒素栽培の実施を提案する(表4)。

 

[成果の活用面と留意点]

1.成木期におけるハックナインの窒素栄養・葉色診断と、それに基づく窒素施肥管理に活用する。

2.本成績の無窒素栽培管理は果実外観品質向上のための暫定的な措置である。

3.8月の降水量が極めて多い状況での排水不良は、ハックナインの生育を停滞させるため、葉中窒素濃度を2.2%程度以下に維持しても果実の地色・着色が基準値に達しない。従って、このような土地では表面排水を良好にする必要がある。

 

平成9年度北海道農業試験会議における課題名及び区分

課題名:りんご「ハックナイン」の良質果実(外観品質)生産のための葉診断と暫定的窒素施肥管理                             (指導参考)

 

[具体的データ]

 

 

[その他]

研究課題名:りんご新品種の栽培法確立試験 2)養分吸収特性と窒素施肥法

予算区分:道費

研究期間:平成9年度(平成1〜9年)

研究担当者:三木直倫、稲川 裕、鎌田賢一、宮脇 忠、渡辺久昭

発表論文等: