軽石流堆積物客土畑に対する有機物施用効果
[要約] 軽石流堆積物の客土は物理性の劣る土壌に対して単独でも効果がある。客土単独では減収した圃場でも堆肥8tの併用で増収が得られ、その効果は3年間以上持続する。緑肥(エンバク)の効果は短期的である。
北海道立北見農業試験場 土壌肥料科 連絡先 0157-47-2146
部会名 生産環境 専門 農地整備 対象 農業工学 分類 指 導
[背景・ねらい]
物理性改善を目的とした軽石流堆積物の客土が作物収量に及ぼす効果を実証するとともに、客土に伴う有機物の希釈及び化学性の低下に対応した堆肥など有機物施用効果について明らかにした。
[成果の内容・特徴]
1.施工断面:土壌硬度が高い土壌では、客土が混合された土層の下に未混合の客土材が分布し、その部位で土壌硬度が低下する(図1)。堆肥施用区では施工3年目でも堆肥由来と思われる黒変した有機物片が土層内で確認され、そこで盛んな根の伸張が起こる。
2.土壌理化学性、微生物性:物理性の劣悪な土壌(置戸試験地)では客土によって容積重、固相率が低下し、気相率、有効水量が増加する。それほど物理性が悪くない土壌(留辺蘂試験地)でも有効水量には改善がみられる。反面、客土により有機物、養肥分の濃度が低下する(表1)。有機物処理は局部的には理化学性を改善し、作物根の伸張を促進する。また、堆肥8tの施用は作土の微生物活性を高める効果がある。
3.客土効果:容積重120g/100g、固層率45%程度の褐色森林土(置戸試験地)では、10cm程度の客土が適量であり、施工2目以降増収が得られる(表2)。これに対し容積重80g程度、固相率35%以下の褐色低地土(留辺蘂試験地)では、客土により減収をまねく恐れがあり、客土量は有効水量10%を達成する最小にとどめるべきである。
4.有機物施用効果:軽石流堆積物は有機物を含まないので、客土施工時に堆肥などを鋤込むことが好ましい。その際、堆肥8t/10a程度の堆肥施用が有効であり、その効果は施用後3年目間以上持続する。また、客土畑への堆肥施用は地力低下に対する緊急対策であるので、4t/10a程度までは堆肥施用に伴う窒素減肥を行わない。それを越えた量については、てん菜の糖分、ばれいしょのでん粉価を低下させる恐れがあるので北海道施肥標準(平成7年)に基づく減肥を考慮する。バ−ク堆肥の効果は小さく、緑肥(エンバク)の効果は初年目を中心に短期的であった。

[成果の活用面・留意点]
①本成績で用いた客土材は屈斜路、または大雪由来の軽石流堆積物である。
②客土施工時に堆肥4t以上を施用した場合には、タネバエ発生の恐れがあるので施工翌年 の豆類の作付けを避ける。

平成9年度農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:軽石流堆積物客土畑における有機物の施用効果(指導参考)

[その他]
研究予算課題名:土地改良事業計画地区土壌調査
予算区分:道費
研究期間:平成4〜8年
研究担当者:東田修司,竹内晴信,市川信雄,松原一実
発表論文等:褐色森林土に対する軽石流堆積物の客土効果,日本土壌肥料学会講演要旨集,43,277(1997)