だいこんを加害するマルガタゴミムシの発生生態、被害多発要因と防除対策
渡島中部地方のトンネル栽培だいこんで多発するゴミムシ被害の加害種はマルガタゴミムシである。越冬成虫の出現時期は5月中旬から7月下旬で、春まきだいこんの収穫期と重なる。被害軽減にテフルトリン粒剤の播種時土壌混和が有効である。
北海道立道南農業試験場・研究部・病虫科 連絡先 0138 (77) 8116
部会名 生産環境 専門 作物虫害 対象 根菜類 分類 指導
[背景・ねらい] 北海道渡島中部地方を中心に多発するだいこんのゴミムシ被害につい て、加害種の特定、発生生態及び被害多発要因を解明し、有効な防除対策を確立する。
[成果の内容・特徴
1. 渡島中部地方におけるトンネル栽培だいこんの6月収穫調査では被害個体率が高いの に対して、道央部や道東部の共選場における7月調査では比較的低く、被害はトンネル 栽培だいこんで大きい。
2. 被害多発圃場におけるゴミムシ類の中で優占種はマルガタ、トックリナガ、キンナガ、 ゴミムシの4種で、マルガタが占める割合が高い。
3. ゴミムシ類4種の活動時間帯は日没後の暗黒時で、行動距離は一晩に約7.5mである。
4. だいこんブロック片に対する接種試験から、加害種はマルガタと特定された。
5. 落とし穴式トラップによるマルガタゴミムシ成虫の捕獲はじめは4月上旬で、5月中旬 から捕獲数が増加し、7月中旬以後減少する(図1)。このうち、新成虫は6月後半か ら捕獲され、大部分は雑草地で捕獲されており、畑地では少ない。
6. 作型別被害調査から、加害時期は5月中旬から6月にかけてである(図2)。
7. 緑肥栽培のマリ−ゴ−ルド圃場では越冬成虫、新成虫ともに捕獲数が多い。
8. BT、IGR系殺虫剤は全く効果がなく、合成ピレスロイド系はノックダウン効果が大き いが死虫率は高くない。有機リン系は全体に死虫率が高い。被害多発の一要因として、 使用殺虫剤の変遷が影響している可能性がある。
9. 圃場試験ではテフルトリン粒剤の被害軽減効果が作型に関係なく安定して高い(図3)。
10. NAC粒剤(ベイト剤)は播種20日後からの10日間隔3回散布で比較的安定した結果が得 られる。テフルトリン粒剤とNAC粒剤散布を組み合わせても、NAC粒剤による防除効果 の増加は認められない。
[成果の活用面・留意点]
1.本成果はだいこんに多発するゴミムシ被害の防除対策に活用する。
2.露地栽培では被害程度は非常に低く、防除の必要はない。
3.テフルトリン粒剤及びNAC粒剤についてはマルガタゴミムシに対して未登録である。
平成9年度 北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:だいこんを加害するマルガタゴミムシの発生生態、被害多発要因と防除対策 (指導参考)

[具体的デ−タ]

[その他]
研究課題名:ゴミムシ類によるだいこんの被害多発要因とその防除対策
予算区分 :道費
研究期間 :平成9年度(平成6年〜9年)
研究担当者:水越 亨
発表論文等:北海道渡島中部地方の春まきダイコンでのゴミムシ類による被害 Ⅰ.被害実態 北日本病害虫研究会報、44号、141−143、1993
        〃 〃 Ⅱ.主要加害種 北日本病害虫研究会報、44号、144−147、1993
        〃 〃 Ⅲ.食害に及ぼす温度の影響 北日本病害虫研究会報、45号、175−176、1994