既存養豚場のSPF変換方式
[要約]一括変換方式によるSPF変換事例をもとに洗浄消毒などのSPF変換作業での諸問題を検討した。SPF変換による疾病清浄化および生産性改善の効果を示し、変換に要した費用は短期間で償還できると考えられた。また変換マニュアルを作成した。
北海道立滝川畜産試験場 研究部 衛生科
ホクレン農業協同組合連合会
連絡先 0125-28-2211
011-251-5545
部会名 畜産・草地 専門 診断予防 対象 家畜類 分類 指導
[背景・ねらい]
養豚場のSPF変換方式のうち、既設豚舎を利用する一括変換方式は、SPF変換での施設コストが少なく、その普及が期待されている。そこで、本方式によるSPF変換事例をもとに洗浄消毒などのSPF変換作業における諸問題を検討し、変換による疾病清浄化および生産性改善効果を明らかにするとともに変換マニュアルを作成した。
[成果の内容・特徴]
1.豚舎の一般的洗浄・消毒法である高圧水洗と逆性石鹸による消毒を行ったところ、豚房の床、壁面ともに細菌数は減少し、SPF変換時の洗浄・消毒法として適当と考えられた。しかし、消毒液温および室温が20℃の時と比較して5℃での消毒効果の低下がみられ、温度に留意する必要が示された。
2.母豚頭数約40頭の養豚場で、一括変換方式によるSPF変換を行った。変換作業は、農場主1名が行い、約1ヶ月の間に豚舎を3回洗浄・消毒する計画としたが、作業員を2〜5名に増員しても約2ヶ月間を要した。その2/3は洗浄消毒作業に要したものであり、豚舎1m2あたりの所要時間は0.46時間であった(表1)。
3.変換農場での豚舎内の細菌数は、洗浄消毒の過程を経るに従い減少し、壁面を除いて最終的に一般細菌が10〜102個/cm2、腸内細菌がほぼ検出限界以下となった。
4.SPF変換の経費は、消毒薬などの資材費が約9万円、洗浄消毒作業などに関わる労働費が約72万円、防疫設備がフェンス76万円、管理棟120万円であった。また肥育豚の出荷開始までに、約150万円の逸失利益があった(表2)。
5.変換前に浸潤していたSPF指定疾病のマイコプラズマ肺炎と萎縮性鼻炎は、変換後の病変検査および病原分離成績により陰性となった(表3)。またSEP様肺炎が25.5%から1.4%へと減少するなどと畜場における内臓廃棄も大きく減少し、疾病清浄化の効果が示された。
6.母豚1頭当りの年間離乳頭数は、SPF変換前の19.6頭から変換後の22.6頭に増加し、離乳時育成率も85.1%から88.4%へと改善した(表4)。
7.農場の経営については、肥育豚1頭当りの診療衛生費および労働費の減少がみられた。一方、豚売上高は、肥育豚の出荷頭数増により大幅に増加した。これらの結果、SPF変換コストも短期間で償還できると考えられた。
8.以上の成績をもとに、一括変換方式によるSPF変換マニュアルを作成した。
[成果の活用面・留意点]
1.変換農場の規模、豚舎の状態および疾病状況を考慮して、変換計画を立てる必要がある。
2.高圧洗浄機の台数、作業者の配置および変換作業の進行管理を的確に行う。
3.洗浄消毒は低温下では行わない。発泡消毒法の使用など、十分な効果がでるように作業する。

[その他]
研究課題名:既存養豚場のSPF変換方式の確立
予算区分: 共同研究(民間)
研究期間: 平成9年度(平成7〜9年度)
研究担当者:及川学、仙名和浩、尾上貞雄、米道裕彌、裏 悦次、岩瀬俊雄、宮内一典