馬におけるチモシー乾草・サイレージの栄養価と牧草のアミノ酸組成
[要約]馬における牧草サイレージの採食性は良好で、乾草と同程度の乾物摂取量となった。乾物消化率や可消化エネルギー含量にもサイレージと乾草の差はなかった。牧草のOb含有率から可消化エネルギー含量の推定が可能であった。粗タンパク質が馬の要求量を満たす含有率であればリジンも要求量を満たす含有率となる。
北海道立新得畜産試験場・生産技術部・環境資源科・草地科 連絡先 01566-4-5321
部会名 畜産・草地 専 門 動 物 栄 養 対 象 分類 指 導

[背景・ねらい]
 馬における同一原料から調製したチモシー乾草とサイレージの採食量、栄養価を比較するとともに、飼養標準を活用するために可消化エネルギー(DE)含量の推定方法を検討した。併せて、牧草類のアミノ酸含量をしらべた。

[成果の内容・特徴]

1)乾草およびサイレージを自由に採食させた際の乾物摂取量に差はみられず、両者とも おおよそ体重の2.0%〜2.7%の範囲で摂取した。また、1番草と2番草の差はなかった。 乾物消化率や可消化エネルギー含量にも差はみられなかった。2番草サイレージで摂取 量が少ない例について原因は明らかではないが、サイレージも乾草と同程度の乾物を摂 取するものと判断した。

2)乾物消化率、可消化エネルギー含量は1番草は収穫までの日数が長くなるにともない 低下した。2番草も同様に生育日数が長くなると低下すると考えられた。

3)牧草のADF含有率とDE含量との間には
 1番草 DE(Mcal/kg)=7.57−0.131×ADF(%) (r=-0.939) 2番草 DE(Mcal/kg)=6.24−0.116×ADF(%) (r=-0.872) の関係 が認められ、1番草はADF含有率からDE含量を推定することは可能である。

4)牧草のOb含有率とDE含量との間には
 1番草 DE(Mcal/kg)=4.68−0.043×Ob(%) (r=-0.952)
 2番草 DE(Mcal/kg)=3.91−0.031×Ob(%) (r=-0.776)
の関係が あった。2番草では相関係数がやや低いが、両式には等分散性、傾き、高さに有意な差 がないことから1、2番草を込みにして
 DE(Mcal/kg)=4.34−0.038×Ob(%) (r=-0.898)
の回帰式が得ら れる。この回帰式はNRCが採用している推定式の決定係数、式の高さもほぼ一致する。 この式でチモシーの馬におけるDE含量の推定が可能である。

5)各アミノ酸含有率は粗タンパク質含有率によって左右されるが、モル比ではほぼ一定の値となった。生草・乾草・サイレージの間にも差は見られなかった。

6)粗タンパク質含有率が馬の要求量(8%以上)を満たしていればリジンの要求量も満たす。

[成果の活用面・留意点]
 本試験で得られたDE含量の推定式は北海道和種馬を用いた消化試験から得られたものであるが、軽種馬の飼料設計にも利用可能である

 馬の維持に要する可消化エネルギー量を満たすためにはチモシー早生品種では1番草は出穂期に、2番草では生育日数60日以内に収穫する必要がある。

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:馬におけるチモシー乾草・サイレージの栄養価と牧草のアミノ酸組成(指導参考)

[その他]
研究課題名:軽種馬用乾草の調製条件と栄養価
予算区分 :受託
研究期間 :平成9年度(平成6年〜8年)
研究担当者:前田善夫、出口健三郎、田村 忠
研究論文等:馬におけるチモシー乾草・サイレージの栄養価および可消化エネルギーの推 定 (新得畜試研究報告:投稿中)