十勝地域の野菜畑作複合経営における作付方式の実態
[要約]十勝地域では、畑作物を基幹とする土地利用の中に野菜が取り込まれているが、輪作に野菜を明確に位置づける経営は少ない。輪作を阻害する主な理由は土地条件不良である。
北海道立十勝農業試験場・研究部・経営科 連絡先 0155-62-2431
部会名 総合研究(農業経営) 専門 経 営 対象    分類 研 究

[背景・ねらい]
 野菜部門は今後の十勝農業にとって重要な位置づけを与えられており、その担い手である野菜畑作複合経営の持続的な展開をはかるために、適切な作物構成と規則性のある作物交代に基づく作付方式を確立することが必要である。そのため、ここでは野菜畑作複合経営における作付方式の実態を把握し、その問題点を整理する。

[成果の内容・特徴]
1.①畑作経営に野菜が導入・拡大されることにより畑作物の作付は影響を受け、その影響は品目・作物間で相違がみられる。
②輪作の特徴は、ア)てん菜または馬鈴しょを基幹 とする4年輪作が支配的であり、畑作物を基幹とする土地利用の中に野菜が取り込まれ ている(表1)。イ)輪作に野菜を明確に取り込んでいる農家は少なく、かつ品目間で差が みられる(表2)。
③輪作の実施率は必ずしも高くなく、輪作を阻害する主な理由は土 地条件不良と労働力不足である。野菜の輪作が不可能な圃場を持つ農家は90%以上あり、その理由は品目によって異なる。
④野菜の前作ないし後作が未確定という農家は50%前 後に達し、また、確定している場合も後作の畑作物はばらついている(表3)。
⑤農家 は野菜の作付間隔の確保に留意しており、想定している作付間隔は品目によって若干異 なるが2〜5年が多い。
⑥野菜畑作複合経営において、野菜と畑作物からなる輪作を見 出すことはできなかった。これら経営では基幹作物は畑作物であり、野菜は補完的な位 置づけにとどまっているためと考えられる。

2.①野菜後の畑作物への施肥を加減する農家は55%で、基肥を減らす農家が多い。
②麦稈は堆肥との交換(62%)や販売(28%)として利用され、豆がらは焼却処分が過半を占めている。
③堆肥を調達している農家は91%あり、酪農に由来する堆肥が65%、肉牛に由来する堆肥が30%である。堆肥は、主にてん菜(66%)とながいも(71%)に投入 されている。
④畑作物が後作の野菜に与える影響としては、悪影響の方が多いと考える 農家が多く、特に病虫害の発生を懸念している。悪影響を受けやすいと指摘されている 品目はだいこんである。
⑤野菜と畑作物の前後作関係で発生するものとして病虫害が多 く指摘されるが、これまでの知見と合致するものは少ない。

3.①野菜と畑作物との間での労働競合は大部分は野菜の収穫作業と畑作物の収穫作業との間で発生し、春作業での競合は多くない。
②野菜の収穫作業は、家族労働力と雇用で行われる場合が多く、にんじんでは作業委託(受託者は出荷先)、だいこんでは共同作業が一部で行われている。

[成果の活用面・留意点]
①野菜畑作複合経営の作付方式に関する経営研究・技術研究を推進する際の情報として活用できる。

②対象経営の構成作物は十勝特有なものであり、他地域で活用する場合には留意が必要で ある。

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:十勝地域の野菜畑作複合経営における作付方式の実態(研究参考)

[具体的データ](略)

[その他]
研究課題名:豆類等の高品質・省力収穫技術と高収益畑輪作体系の確立
予算区分:国費補助(地域基幹)
研究期間:平成9年度(平成7年〜9年)
研究担当者:浦谷孝義
発表論文等: