寒地水田の水管理の実態と試作給水栓の効果
[要約]田水温と用水温の変動傾向を調査して間断かんがいの効果を再確認し、現地の水管理での、特定の時刻への水需要の集中・掛け流しによる給水ロス等の実態を把握し、自動給水栓・自動止水栓等の試作品を現地に取り入れて、用水の省力的かつ効率的な利用方法を検討した。
北海道立中央農業試験場・農業土木部・農村環境科 連絡先 01238-9-2001(284)
部会名総合研究(農業物理)専門農地整備対象農業工学分類指導

[背景・ねらい]
 本道における稲作の冷害回避の技術として、間断かんがい、深水かんがい等の水管理が欠かせない。また現在では水利用の形態が変化して、水需要の集中・逼迫化・用水不足という問題も発生している。そこで、現地の水管理の実態を把握し、問題点を解決するために試作した自動止水栓及び自動給水栓の効果を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 田水温をあまり低下させない適切な取水時間帯は、用水と田水の温度差が最も少ないか、あるいは、用水温の方が高い、おおむね20時から翌朝6時の夜間にかけてである(図1、2)。

2. 低温の用水をかんがいする地区では、日照不足が予測される日には、予め圃場への給水を行い、水位を必要な高さにまで上げておくことが重要である。

3. 早朝給水と深夜給水の田水温を両者間で比較すると、前者に比べ後者の方が高い傾向が認められ(図3)、早朝給水と夕方給水では両者の較差はあまり認められない(図4)。しかし、日中給水では、冷たい用水温の影響を受けて田水温がかなり低下する。

4. 開水路給水の場合は、深夜の用水利用が多いが、その際掛け流しかんがいのような用水ロスの事例が多く(図5)、今回試作した自動止水栓では、給水作業の省力化・労務節減効果が認められ、拘束時間の解消、給水時間のシフト、並びに用水ロスの減少効果も期待できる。

5. 管水路給水の場合は、早朝取水の例が多いため、早朝に水需要が逼迫する場合が多く(図6)、今回深夜給水を自動化出来るよう改良した自動給水栓では、水管理作業の省力化・給水時間のシフト・設定水位の安定等の効果が得られる(図6)。

[成果の活用面・留意]
1. 用水温と田水温の変動傾向は、各々の地域の気候・地形条件等によって異なるため、事前に該当する地域での、変動傾向の実態調査を行う必要がある。

2. 全自動給水栓、及び自動止水栓はまだ試作段階であり、今後改良を要する箇所もある。

3. 水田区画規模に対応した必要個数についてはその都度検討すべきである。

4. 用水の絶対量が不足している地区や、また代かき期のような連続かんがいの行われている時期の用水不足については未検討であり、別な手法が必要と思われる。

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:寒地水田の水管理の実態と省力的な給水栓の試作調査(指導参考)

[その他]
研究課題名: 寒地水田の水管理の実態と省力的な給水栓の試作調査
予算区分: 道費
研究期間: 平成9年度(平成6〜9年)
研究担当者: 長谷川昇司・寺元信幸
発表論文等: なし