GPSによる車両位置計測

【 要約 】GPSによる圃場内の車両位置計測において、1周波受信のGPSでは測位誤差が大きいが、2周波受信のRTK-DGPSの測位誤差は5cm以下と良好である。測位時、移動局の受信感度は建物、圃場の凹凸、樹木の枝などにより低下し、測位誤差が増加する。

北海道立中央農業試験場・農業機械部・機械科

連絡先 01238-9-2001
部会名 総合研究 (農業物理) 専門 機械 対象 計測技術 分類 研究

【 背景・ねらい 】
 圃場作業の省力化、無人化にはトラクタおよび作業機の自律走行が有効な手段と考えられる。このためには圃場内でトラクタや作業機の位置計測が不可欠であり、GPSセンサによる位置計測システムおよび通信システムの検討を行う。

【 成果の内容・特徴 】
1.1周波受信のGPSでは、静止時単独測位の最大と最小の差は緯度で約7秒、経度で約3.5秒である。DGPSでの測位誤差は緯度で平均0.08536秒(2.64m)、経度では平均0.07107秒(1.56m)と単独測位より大幅に測位精度が向上する(表1)。

2.2周波受信のリアルタイムキネマティックDGPS(以下RTK-DGPS)では、静止時、緯度、経度および高度の測位誤差は全て5cm以下と測位精度は良好で、安定した測位である(図1)。また、測位誤差は経度、緯度、高度の順に大きくなる。

3.防除作業や牧草刈り取り作業を行うトラクタのRTK-DGPSを利用した位置計測において (図2)、トラクタ走行時の測位精度は良好であるが、通信モデムの受信感度が低下すると測位誤差が大きくなる。

4.RTK-DGPSによる位置計測時に使用した特定小電力無線モデムの通信は、障害物のない平地では良好であるが、建物、圃場の凹凸、樹木の枝などにより受信感度が低下し、GPSの測位誤差が大きくなる。送信機の高さにより異なるが、立地条件が良好で受信側にアンプを装備した場合、特定小電力無線モデムの通信距離は300〜500m程度と考えられる。

【 成果の活用面・留意点 】
1.1周波GPSは測位精度が低いため、広い区域を対象とした利用が望ましい。

2.RTK-DGPSによる測位精度は良好で、かつ安定した測位であり、圃場での車両位置の計測に利用可能である。

3.特定小電力無線モデムは障害物などにより受信感度が低下するため、無線モデムの種類や出力、アンテナ、アンプなどの検討とともに、利用時の立地条件に注意が必要である。

【 用 語 】

1周波GPS:標準測位サービスで、L1波(1575.42MHz)とC/Aコードにより測位を行う。

DGPS:位置が正確にわかっている基準局でGPS受信を行い、その誤差成分を補正データとして移動局に送り、誤差成分排除した相対測位方式で、測位精度は高い。

平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:GPSによる車両位置計測(研究参考)

【 具体的データ 】

【 その他 】

研究課題名:農作業のロボット化に関する基礎研究
予算区分:道費
研究期間:平成9年度(平成7〜9年)
研究担当者:原 令幸
発表論文等:なし