乳牛舎用ゴムチップマットレスによる牛床改善効果 | |||||||
[要約]ゴムチップマットレスには、ゴムチップばら詰め方式と、シート被覆した筒状方式とがあり、いずれの構造のマットレスでも、つなぎ牛舎およびフリーストール牛舎に設置して、牛床横臥頭数、牛床横臥時間割合、平均連続横臥時間などを高めることができる。 | |||||||
北海道立根釧農業試験場・研究部・酪農施設科 | 連絡先 | 01537-2-2004 | |||||
部会名 | 総合研究(農業物理)、畜産・草地(畜産) | 専門 | 農業施設 | 対象 | 家畜類 | 分類 | 指導 |
[背景・ねらい]
フリーストール牛舎では牛床利用率を向上させるために、さまざまな牛床構造が開発利用されている。牛床は適度な柔軟性があり、表面が乾燥し起立横臥動作に障害とならないことが求められている。ゴムチップを充填したマットレスはこれらの条件を満たす構造の一つであり、自家施工が可能なゴムチップばら詰め方式と、表面をシートで被覆する筒状方式とがある。
本試験では、ゴムチップマットレスの構造と耐久性、およびゴムチップとシートの素材特性を検討するとともに、乳牛の牛床横臥率を高め牛体汚染等を防ぐために、マットレス設置前後での乳牛行動解析によりマットレス設置による牛床改善効果を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
1.ゴムチップマットレス用被覆シートの強度は引っ張り破断強度が185×185kgf/3cm(カタログ値)以上で、かぎ裂きしにくく裁断面の糸がほつれないものが望ましい。
2.ゴムチップばら詰め方式のマットレス利用5か月後の牛床後部のゴムチップ水分は防水区で1.8%、防水がない区ではふん尿の混入により16.0%と高く、ゴムチップマットレス用被覆シートには防水性が必要である(表1)。
3.被覆シートをしない試作筒状マットレスの単独設置では連続使用は難しいが、表面に防水性シートで被覆することにより内部の汚染が防止されるので十分利用が可能である。
4.つなぎ牛舎では、乳牛の起立横臥パターンは管理作業に制約され、マットレス設置前後で大きな変化はみられないが、マットレス設置により横臥時間がのびる傾向がみられる(表2)。
5.フリーストール牛舎では、ゴムチップマットレス設置により平均横臥頭数および横臥時間割合が増加する。連続横臥時間も設置前48分から設置後73分へ延長されマットレス設置により高い牛床改善効果が期待できる(表3)。
6.粒状および粉状ゴムチップばら詰めマットレスの設置直後での牛床利用状況は、粒状の方が横臥時間割合が高く、半年利用後の平均横臥時間割合は設置直後の42.6%から46.0%に増加しており、粉状、粒状にかかわらずゴムチップマットレスによる牛床改善効果は維持できる(表4)。
[成果の活用面と留意点]
1)脚に付いたふん尿を除去するため、マットレス設置牛床でも少量の敷料が必要である。
2)つなぎ牛舎の場合にはカウトレーナ等によりふん尿が牛床上に落下しないように管理し、敷料の交換、ふん尿の除去等基本的な牛床管理を実施する。
3)既存牛舎にマットレスを設置する場合には、設置後の隔柵高さ、ネックレール位置等の調整をしマットレス設置により乳牛の横臥空間が制約されないようにする。
平成9年度北海道農業試験会議成績会議における課題名及び区分
課題名:乳牛舎用ゴムチップマットレスによる牛床改善効果(指導参考)
[具体的データ]
表1 5カ月使用後のゴムチップ水分(%)採取位置 | 牛床前 | 牛床中央 | 牛床後部 | 未使用 |
防水なし | 2.0 | 10.5 | 16.0 | 1.1 |
防水あり | 1.3 | 1.6 | 1.8 | 1.1 |
表2 つなぎ牛舎における牛床位置別の横臥時間割合(%)
牛床位置 | 牛 床 全 体 | 牛床2を除く | ||||||||||
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 9 | 平均 | 標準偏差 | 平均 | 標準偏差 | |
マットレス | 47.0 | 10.5 | 62.6 | 62.5 | 65.7 | 45.8 | 66.3 | 63.9 | 53.0 | 19.0 | 59.1 | 8.8 |
設置前 | 33.5 | 30.6 | 54.4 | 56.2 | 49.4 | 44.8 | 59.9 | 39.2 | 46.0 | 10.8 | 48.2 | 9.6 |
表3 フリーストール牛舎における平均横臥時間割合と連続横臥時間
区 分 | マットレス設置前 | マットレス設置後 | ||
全牛床平均 | 標準偏差 | 設置牛床平均 | 標準偏差 | |
横臥時間割合(%) | 31.0 | 10.29 | 41.3 | 7.67 |
平均連続横臥時間(分) | 47.7 | − | 73.3 | − |
表4 乾乳牛によるマットレス設置条件による横臥時間割合(%)
区 分 | 牛床全体 | 牛床1〜9(粒状ゴムチップ) | 牛床10〜15(粉状ゴムチップ) | |||
平均 | 標準偏差 | 平均 | 標準偏差 | 平均 | 標準偏差 | |
オガクズH6 | 40.0 | 12.1 | 37.0 | 13.9 | 44.5 | 8.0 |
マットレスH6 | 42.6 | 9.0 | 48.0 | 5.4 | 34.4 | 7.2 |
マットレスH9 | 46.0 | 18.0 | 52.5 | 11.9 | 36.3 | 22.2 |
[その他]
研究課題名 :乳牛舎用ゴムチップマットレスによる牛床改善効果
予 算 区 分:受託
研 究 期 間:平成9年度(平成7〜8年)
研究担当者 :高橋圭二、竹中秀行、稲野一郎
発表論文等 :「ゴムチップを用いた乳牛舎用マットレスについて」平成7年度農業施設学会大会