搾乳牛の集約放牧のための放牧計画の立て方

[要約]乳量8,500kg程度の搾乳牛集約放牧では、1頭あたり50aの放牧地・短草利用1日転牧昼夜放牧の条件下で、放牧草からTDN必要量の55%が供給できる。これを前提に、季節ごとの牧草TDN生産速度に配慮した牧区数輪換日数)の計算方法を示した。

海道農業試験場・草地部・放牧利用研究室

連絡先

011-857-9313

部会名

畜産・草地

 

飼育管理

 

家畜類

 

 

[背景・ねらい]

牧草の短草利用を基軸とする集約放牧技術は、放牧期間を通して一定の草量と高消化率の牧草を供給でき、個体乳量、8,000〜9,000kgの搾乳牛を低コストで省力的に飼養できる。北海道ではこの技術に対する農家の関心が高く、これを導入する農家も増えつつある。そこで、放牧地のTDN生産速度および搾乳牛のTDN必要量をもとにした、各地域で汎用的に使える集約放牧計画(1牧区面積や季節別牧区数の算出など)の立て方を示す。

[成果の内容・特徴]

  • 1牧区面積の設定
    メドウフェスク(MF)主体混播草地は草高25cm、ペレニアルライグラス(PR)主体混播草地は草高20cmで利用し、その際の乾物現存草量はそれぞれ176g/㎡、130g/㎡である(図1)。この短草利用条件下で1日の割当草量(体重100kgあたりの乾物現存草量)を5kgとすると、昼夜放牧により体重比で約2%の放牧草が採食される(図2)。平均体重650kgの40頭の乳牛をMF草地に放牧する場合、5kgの割当草量を確保するため、1日1頭あたり185㎡(5kg×6.5/0.176kg)の放牧地を準備し、頭数倍して1牧区面積(185㎡×40頭=0.74ha)とする。
  • 草地の季節別TDN生産速度の把握
    草地のTDN生産速度は地域や草種により異なるため、実測する必要がある。代表的な2〜3ヶ所の牧区を特定し、ライジングプレートメータなどで、各牧区の放牧前後の現存草量を毎回測定する。あわせて、入牧時に草をサンプリングし、TDN含有率を求め、TDN生産速度を算出する(図3)。
  • 牛群のTDN必要量の把握と放牧による供給率
    飼養標準により、放牧牛群のTDN必要量を求める。本放牧方法では、通年繁殖・平均乳量8,500kgの搾乳牛群ならば、放牧期間を通じてTDN必要量の55%が放牧草から供給できる。
  • 季節ごとの牧区数、輪換日数の決定
    生育した草の平均85%が採食されるとして、必要放牧地面積を次式により求める。
  • 必要放牧地面積=(日TDN必要量×0.55)/(日TDN生産速度×0.85)
    必要牧区数(輪換日数)は必要放牧地面積を1牧区の面積で割る(表1)。

    [成果の活用面・留意点]

  • 頭あたり50aの放牧地面積が確保され、乳量8500kg程度の搾乳牛群を放牧する場合、各地域における牧草の日TDN生産速度を測定すれば、季節別の必要牧区数が求められる。
  • その年の天候により牧草のTDN生産速度が変動するので、牛と草地の状態をみて調整する。
  • [その他]

    研究課題名:「高泌乳牛のための高栄養草種・品種の選定と最適放牧利用法の開発」
          「高泌乳牛放牧における乳量・乳質安定化のための補助飼料給与法の開発」
    予算区分:経常
    研究期間:平成9年度(平成6〜9年)
    研究担当者:須藤賢司・落合一彦・池田哲也・本間毅郎
    発表論文等:日本草地学会誌43巻別号P340〜341,P392〜393(1997)