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根釧農試 研究通信 第11号 2002年3月

簡易ふん尿堆積場の造成法


 

1.背景・ねらい

 平成11年から「家畜排せつ物法」が施行されたこと受け、農家では経営規模に見合った充分な容量を持つふん尿貯留施設を設備する必要性が生じてきています。しかし堆肥舎、堆肥盤の整備には多額の費用がかかるため、現状は全ての農家で整備するのは非常に困難です。

 本課題では、シートを用いた低コストな簡易ふん尿堆積場を造成して堆積試験を実施し、得られた知識を元に簡易ふん尿堆積場の基本的な造成法を提示することをねらいとしています。 


2.技術内容と効果

簡易ふん尿堆積場とは?
 図のように底面に2%程度の傾斜を付けて整地します。その上に遮水シートを張り、暗渠配水管を設置したのちシート保護のために床土を入れます。この床土の上にふん尿を堆積し、上部を雨水混入防止用のシートで被覆します。(図、省略) 

 ふん尿からにじみ出る排汁は床土にしみ込んで下方へ移動し、暗渠管から排出される仕組みです。排汁は貯留槽へ設置して回収し、汲み出しと散布をおこないます。

どのくらいのふん尿が積める?
 高水分ふん尿を堆積するときは、中水分や低水分のふん尿と比較して積み上げ可能高さが低くなるので、より広い面積が必要になります。計算上は堆積場の面積が100m2のとき、高水分ならば約70t、中水分ならば80~90t程度のふん尿が堆積可能です。(図、省略)

排汁の量は?
 堆積試験の結果から、半年間の堆積でふん尿重量の10~20%程度が排汁として出てくることがわかりました。定期的に排汁の汲み出し・散布をおこなうのであれば期間中に排出される排汁を全量貯留する必要はありません。しかし、ふん尿堆積開始直後および融雪期は排汁量が多くなるので注意が必要です。 
貯留槽としては
・防水シート利用のラグーン
・廃用となった飼料タンク
などが利用可能です。飼料タンクを使う場合には柵などを立て、作業の安全を確保しましょう。

 また、堆積場を施設地内に造る場合には、排汁を一旦小さな容器に受け、既設の尿溜めにポンプで圧送することもできます。


堆積場のタイプと堆積試験の様子(写真、省略)
<堆積場内で機械作業・・・堆肥盤型> 
 堆積場の内部で機械作業を行う場合、床土には充分な支持力を得られる材料(花崗岩風化物など)を用い、充分に締め固めて造成します。

・堆肥盤型での堆積試験
 水分78%のふん尿を88t、293日間堆積したところ、排汁量は約11t(堆積重量の約13%)でした。 また、ふん尿撤去時にも床土の硬さは維持されており、機械で搬出作業が可能でした。高水分のふん尿(水分84%)72tを堆積した場合には、床土表面に排汁が溜まり、泥ねい化が見られましたが、縦暗渠管をもうけることで表面からの排汁を除去できました。 

<堆積場の外側から作業・・・堆肥列型
 堆積場を細長く造成して、外側からバックホーで作業を行う場合には、支持力の弱い圃場の土も床土として用いることが出来ます。このタイプは外部から床土を運び込む必要が無く経済的です。

・堆肥列型での堆積試験
 床土の条件を変えた堆積場に、水分82~86%のふん尿を各5tずつ堆積したところ、150~180日間で重量はおよそ30%減少し、ふん尿重量の10~20%が排汁として排出されました。また排汁は透明で、臭いもふん尿臭から有機酸臭を放つものに変化しました。


利用できる底部シートの資材は? 
 底部シートとしては、一般的に土木用遮水シートとして用いられているものが利用可能です。最近ではEVAシートのような安価で耐寒性に優れる資材も現れており、このような新しい資材も利用していけると考えられます。


 

シートの例価格の目安備考
加硫ゴムシート1,910円/㎡~
(1.5mm厚)
一般的に用いられる遮水シート
ポリエチレンシート2,430円/㎡~
(1.5mm厚)
高価だが耐寒性が高い
EVAシート
(エチレン酢酸ビニル共重合体)
270円/㎡~
(1.5mm厚)
安価で耐寒性が高い



3.留意点 

・全てのふん尿をこの施設で貯留するのではなく、既存の施設と組み合わせて活用しましょう。

・シートの選択は堆積場の造成規模や使用年数、作業にあわせた堆積場の形状など、資材業者と相談の上、慎重におこないましょう。 
 

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