農業研究本部へ

酪農試験場

H13_kenkyu_p08_senzai

根釧農試 研究通信 第11号 2002年3月

電気伝導度を利用した酪農洗剤溶液の濃度推定法


 

1.背景・ねらい

 ミルカやバルククラの循環洗浄では洗剤溶液濃度を適切に維持することが重要で、洗剤溶液濃度とその算出基礎である洗浄水量の確認が必須です。しかし、現地で洗剤溶液濃度の目安として利用されているph法は精度が低く濃度の推定が困難です。

 また、排水の採取による洗浄水量の実測は人手がかかり施設によっては困難な場合があります。洗剤溶液濃度が簡易に精度よく推定できれば、投入洗剤量から洗浄水量の推定も可能です。

 そこで、電気伝導度を使用した濃度推定法を改良し、循環後のアルカリ洗剤溶液濃度の推定精度向上を図るとともに現地での具体的な試料採取と濃度推定手順を検討しました。 


2.技術内容と効果

電気伝導度法の改良
 調整直後のアルカリおよび酸性洗剤溶液では、濃度と電気伝導度に比例関係があり、洗剤別の推定式を作成することで電気伝導度から溶液濃度を推定できました。しかし、アルカリ洗剤溶液では調整後容器を解放したままで室温に保存すると、空気中の炭酸ガスを吸収して電気伝導度が漸減し数日かかって安定する現象がみられました。

 洗浄溶液循環工程でも類似の反応が起きており、この現象がアルカリ洗剤溶液の濃度推定精度が低い原因となっていました。

 一方で、容器を解放し室温保存することで電気伝導度を安定な状態にすると、溶液濃度と電気伝導度に調整直後と別の比例関係がみられました。このことから、アルカリ洗剤溶液に対しては調整直後と安定化後の2つの推定式を作成し、調整直後の溶液では調整直後の推定式を使用することで、循環工程等により空気と接触した洗剤溶液では、容器を解放し室温保存して安定状態となった電気伝導度を測定し安定化後の推定式を使用することで誤差10%以下で濃度の推定が可能となりました。(図1、図2省略)

 なお、酸性洗剤では空気との接触で電気伝導度が変化することはなく、調整直後の推定式を使用して洗剤溶液循環工程後の溶液濃度もほぼ性格に推定できます。 

 
溶液採取と濃度推定手順
 洗剤溶液の採取は、ミルカーではばらつきの大きい循環開始直後の採取を避けて十分攪拌した循環直前あるいは循環開始後5分経過以降の溶液または排水を、バルククーラーでは排水を採取する必要があります。(図3、省略) 

 アルカリ洗剤では循環直前の溶液は採取直後に電気伝導度を、循環5分経過以降の溶液は採取後容器を解放して数日間室温保存して数値が安定したときの電気伝導度を測定し、それぞれ対応した推定式を使用して濃度を推定します。また、測定時の液温が15~35℃の範囲であれば、自動温度補償機能(2%)を利用できます。 

 酸性洗剤ではいずれの採取溶液も、採取直後に電気伝導度を測定し調整直後の推定式で濃度を測定します。しかし、温度補償係数が一般的な値と異なるため、液温を25℃に調節して電気伝導度を測定する必要があります。


3.留意点

 電気伝導度法では洗剤別に推定式が必要ですが、簡単に作成でき洗剤溶液濃度の推定誤差も10%以下であることから、ph法に替えて洗浄システムにおける水量の測定と洗剤量の設定・点検に利用できます。しかし、洗剤の製造ロットや処方の変更により電気伝導度特性が変化する可能性があるので、濃度推定式を定期的に検証する必要があります。(図4、表1、表2省略) 


(省略した図)
 図1 アルカリ洗剤の解法保存中の電気伝導度の変化
 図2 調整直後および安定化後の溶液濃度と電気伝導度の関係(アルカリ洗剤溶液)
 図3 ミルカーの洗剤溶液循環工程中における溶液の電気伝導度の変化
  図4 電気伝導度から濃度への換算表
 表1 溶液の採取方法
 表2 電気伝導度の測定方法

研究通信に戻る根釧農試TOPへ