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酪農試験場

品種:4号の2

根釧農試 研究通信  第4号

1994年3月発行)

新牧草・飼料作物優良品種および馬鈴しょ新品種の紹介

2 アルファルファ新品種「月系4号」

アルファルファは有史以前から栽培されており牧草としては最古のものです。その優れた飼料特性から「牧草の女王」とも言われています。女王というのは少しおおげさかもしれませんが、優れたマメ科牧草でることはよく知られています。

現在北海道のアルファルファの作付け面積は約1万ha。主な栽培地帯は網走、宗谷、上川管内です。この3支庁だけで北海道のアルファルファ栽培面積の55%を占めます。ところが主要な酪農地帯である根釧地域では約300haの栽培面積しかありません。

これまで根釧でのアルファルファ栽培を妨げる主要な要因は土壌凍結またはそれを引き起こすほどの低温と言われてきました。しかし、最も栽培面積の多い網走も土壌凍結地帯です。網走の気象と比較して際だつ相違点は夏期間における根釧の寒冷寡照です。海外の主要なアルファルファ栽培地帯には根釧より寒さの厳しいところが多くあります。しかしそのようなところから耐寒性品種を導入しても根釧では「そばかす病」のような葉を枯らせてしまう病気が多発してうまく定着できません。この葉枯れ性病害は根釧のような寒冷寡照地帯で多く発生する特徴があります。現在までそばかす病に強い耐寒性品種は見つかっていません。そのようなことから根釧農試では昭和62年から根釧向きの品種を育成すべく札幌にある北海道農試と共同で研究を続けてきました。

その成果の第1号が「月系4号」です。同系統は北海道農試における耐病性(葉枯性病害抵抗性、バーティシリュウム萎ちょう病抵抗性)の改良と、根釧農試におけるそばかす病抵抗性、耐寒性の選抜によって誕生し、今回優良品種に認定されました。

1.特性の概要

1)乾物収量は道東の少雪地帯で多収を示し、「キタワカバ」比で117%です。4年目の収量は「5444」を上回ります。ただし道央、道北の多雪地帯では「キタワカバ」並みかやや低収です。

2)そばかす病に対しては「キタワカバ」および「5444」より強い特徴があります。

3)積雪がほとんど無い状態で評価される耐寒性は「キタワカバ」を「中」とした場合、これより強い「やや強」です。同じランクの「5444」に比べてもやや強い傾向があります。

4)自然条件での冬越しの状態を示す越冬性は「キタワカバ」および「5444」よりやや優れています。

5)早晩性は「キタワカバ」と同じ早生です。

6)倒伏は「キタワカバ」および「5444」より少なく優れています。

7)早春草勢、刈り取り後の草勢は「キタワカバ」および「5444」より優れています。

2.適応地域

適応地域は北海道の少雪地帯です。

道央、道北の多雪地帯でも「キタワカバ」並みの収量性はありますが、「月系4号」がその多収性を発揮するのは少雪地帯です。適応地域には根釧はもちろん現在のアルファルファ栽培の中心地網走、また十勝の一部を含みます。

3.栽培上の留意点

根粒菌着生の促進、定着時の雑草の抑制、適期の刈り取りなどアルファルファ栽培の基本に留意して下さい。また、凍上の恐れがある地域ではイネ科牧草と混播して下さい。

「月系4号」はそばかす病抵抗性と耐寒性を兼ね備えた品種です。草勢や耐倒伏性も改良されています。したがって従来の品種よりは栽培し易くなっています。しかし、アルファルファの定着はアスクローバほど容易ではありませんから初期の管理が重要ですし、土壌凍結地帯の場合、単播栽培では凍上によって株が浮き上がる可能性があります。「月系4号」の多収性を発揮させるためにもアルファルファ栽培の基本に留意することが必要です。

4.種子の供給が可能となる時期

一般に種子が供給される時期は1998年です。

牧草の種子生産は国内育成品種であっても採種量の多い海外で実施しています。そのため農家の皆さんが利用できるまでには時間がかかります。もうしばらくお待ち下さい。

なお「月系4号」は系統番号です。近い内に名前がつけられます。