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酪農試験場

根釧農試研究通信:7号の3

根釧農試 研究通信  第7号

1997年3月発行)

研究成果

3.乳牛の糞尿量および糞尿窒素量の低減

酪農第一科

1 試験のねらい

乳牛の糞尿利用・処理施設の設置にあたり、基準となる糞尿量のデ-タが少ないことから、根釧農業試験場で実施した出納試験のデ-タをもとに、糞尿量および糞尿窒素量を明らかにするとともに、それらの低減を図るための飼料的要員を検討しました。

2 試験の方法

1) 乳牛の糞尿量および糞尿窒素量

供試牛は初産牛128頭、経産牛131頭であり、出納試験は牧草サイレ-ジ主体飼養の自由採食で行い、予備期2週間、本期4日間としました。給与飼料はCP含量が初産牛、経産牛各々16.6、15.5%、TDN含量が70.0、71.5%乾物摂取量は各々15.5、20.9㎏/日でした。

2) 飼料蛋白質の効率的利用による糞尿窒素量の低減

供試飼料は牧草サイレ-ジ主体の混合飼料(粗濃比55:45)で、CP含量13、15、17%の3水準設け、CP13、15%区にはアミノ酸バランスを考慮して、魚粉を2%給与しました。供試牛は泌乳中期の経産牛6頭で、1期3週間の3 ラテン方格法で窒素出納試験を行いました。

3 試験の結果

1-1) 糞量は初産牛、経産牛の全乳期の平均で各々35.8、51.4㎏/日であり、乳期による差が見られませんでした(表1省略)。また、糞量はNDF摂取量と正の相関が見られたことから(図1省略)、良質粗飼料の給与などにより、NDF摂取量を減少させることにより、糞量は低減できると考えられます。

1-2) 糞窒素量は初産牛、計算牛各々146、179g/日と経産牛が、乳期はいずれも泌入前期が後期に比べ多かった。また、糞窒素量はCP摂取量と正の相関が見られ(表2省略)、一般的にはCP摂取量が高くなると、糞窒素量も増えることが示されました。

1-3) 尿量は初産牛、経産牛各々13.8、13.0㎏/日、尿窒素量は各々78、100g/日であり、いずれもTDN/CP比と負の相関が見られました(表2,図2省略)。また、尿量と尿窒素量は高い相関が見られ、飼料中の蛋白質とエネルギ-のバランスを適正に保つことにより、尿量および尿窒素量を低減できることが示されました。しかし尿量は個体差が大きく、飼養条件、環境等によっても変動が大きいことを考慮する必要があります。

1-4) 乳量1㎏あたりの糞尿量及び糞尿窒素量では、泌乳前期が泌乳後期に比べて少なく、泌乳前期の乳量水準で比較しても高乳量群が中乳量群に比べて少なく、乳量水準を高めることにより、乳量当たりの糞尿量および糞尿窒素量は低減できるものと考えられました。

2-1) 乳量、乳蛋白質量、糞尿量および糞窒素量は処理間差はありませんでしたが、尿窒素量はCP13、15、17%区各々69、98、125g/日と有意差がみられ、飼料の窒素およびアミノ酸バランスを考慮することにより、尿窒素量を低減できることが示されました(表3)。

2-2) 乳中および血中尿素窒素は、尿窒素量が多くなるにつれ高くなり(P<0.002)、尿窒素量低減のための指標として有用であると考えられます(表3省略)。

このように、糞尿量は初産牛49.6㎏/日、経産牛64.4㎏/日であり、糞量は繊維摂取量を減少させることにより、また、尿窒素量は飼料中の蛋白質とエネルギ-のバランスを考慮することにより、それぞれ低減できることが明らかとなりました。