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酪農試験場

根釧農試研究通信:7号の5

根釧農試 研究通信  第7号

1997年3月発行)

研究成果

5.乳牛のボディコンディションの推移と繁殖性との関連

酪農第二科

1 試験のねらい

乳牛においてボディコンディションスコア(以下BCS)は体蓄積脂肪量、すなわち肥満度の指標として用いられています。乳牛は分娩後、泌乳量が多くこれに見合う乾物量を摂取出来ないことからTDN不足となり、不足エネルギ-を体脂肪の動員で賄っています。しかし、体脂肪の過剰な動員は脂肪肝へと結びつき、ひいては各種の生産病発生の引き金となります。その一つとして繁殖性への影響が言われており、根釧農試でも泌入初期のTDN不足が卵巣機能に悪影響を及ぼすことをすでに報告しています。

そこで今回、TDN充足の代替えになると考えられるBCSを指標として、その推移と繁殖性との関連を検討しました。

2 試験の方法

乳検成績や繁殖成績に基づき中標津町の5農場を選定し1995年12月から1996年9月までの10ヶ月間、月2回づつ各農場の軽産牛と分娩が近い未経産牛のBCSを採点しました。BCSの採点にはワイルドマンの原法を簡略化したファ-ガソンの方法を用いました。

3 試験の結果

1) 各農場ごとに特徴的なBCSの推移が見られ、繁殖性との関連が示唆されました(図1,表1省略)。すなわち、分娩時のBCSが比較的好適と思われた農場(A、B、E)の中、分娩後のBCS低下が小さく、回復の早かった農場(A)の繁殖成績は最も良好であり、卵巣の疾患の発生も少ないものでした。しかし、分娩後の低下が大きく、快復の遅かった農場(B)の繁殖成績は劣り、卵巣疾患の発生も多く見られました。

また、分娩後の低下はそれほど問題ではなかったが蹄病の多発した農場(E)の成績はよくありませんでした。 分娩時のBCSが極端に低かった農場(C)および分娩時のBCSが低い上に分娩後の低下が大きかった農場(D)の繁殖成績も劣っていました。また、これらの農場の卵巣疾患の発生も多く認められました。

2) 5農場の受胎牛について分娩時のBCSを3.0以下、3.25~3.75および4.0以上に分けて繁殖成績を見ると、3.25~3.75の場合に空胎日数が短くなっていました(表2省略)。

3) 同様に分娩後8週までのBCSの低下を0.5以下と0.75以上に分けて繁殖成績を見ると0.5以下の方が空胎日数は短く(表3省略)、特に分娩時のBCSが4.0以上の場合、BCSの低下が0.5以下と0.75以上を比較すると、授精回数は平均1.5回と2.5回、初回授精受胎率は50%と0%、空胎日数は平均82日と126日で、いずれもBCSの低下が大きいと繁殖成績も低下する傾向がみられました。

4) BCSの1.0低下は体重約51㎏の減少に相当しました。

5) 蹄疾患の発生が多かった農場で締疾患と繁殖成績との関連をみると、締疾患は明らかに繁殖成績に影響し、BCSの低下をも招いていました(表4省略)。

以上のことから良好な繁殖成績を期待するためのBCSの条件は、第一に分娩後のBCSの低下を出来るだけ小さくすること、第二には分娩時のBCSを3.25~3.75にすることが重要と思われました。さらに、蹄疾患も乳牛の繁殖に悪い影響を与えていました。