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酪農試験場

根釧農試研究通信:9号の6

根釧農試 研究通信  第9号

1999年3月発行)

研究成果

6.サイレージ主体飼養における乳牛の乾物摂取量

酪農第一科

1.試験のねらい

北海道の主要な自給粗飼料である牧草サイレージおよびとうもろこしサイレージを主体に、高泌乳牛を飼養するための基準となる乾物摂取量(DMI)およびDMIに及ぼす要因を示す。

2.方法

1)解析データ:根釧農試及び新得畜試で、1987~1997年に実施された飼養試験成績

・泌乳前期牛(分娩後1~15週):根釧102頭(分娩後9~15週は77頭)、新得147頭

・乾乳牛(分娩前4~1週):根釧98頭

・産次:すべて2産以上で、平均産次は根釧、新得とも3.3産

2)DMIの推定:泌乳安定期のDMI推定には、分娩後11~15週の4%補正乳量(FCM)および体重の平均値を用いた重回帰分析を行い、乾乳期は分娩前4~3週の平均値を示した。また、泌乳初期は要求量に見合う乾物量を摂取できないため、DMI推定値の補正を検討した。

3.結果の概要

1)給与飼料は主に混合飼料であり、粗飼料は根釧では牧草サイレージ、新得ではとうもろこしサイレージおよび牧草サイレージであった。泌乳前期の全飼料中乾物率は、根釧・新得各々54.5、43.1%、CP含量は16.0、16.8%、TDN含量は77.8、75.0%、NDF含量は39.9、36.6%であり、粗飼料割合は乾物量で各々52.4、61.3%、TDN量で44.6、55.4%であった。

2)分娩後11~15週のDMIは、根釧、新得各々21.7、23.8kg/日、DMI/体重は3.37、3.76%であり、根釧は新得よりDMIで2.1kg、DMI/体重で0.39ポイント低かった。しかし、FCMおよび体重には差が見られなかった(表2:省略)。

3)泌乳安定期のDMI推定式は日本およびNRC飼養標準で採用されている体重およびFCMを独立変数として、次のように作成した。

根釧:DMI(kg/体重)=0.02034×体重(kg)+0.31612×FCM(kg/日)-2.2288(R^2=0.55)

新得:DMI(kg/体重)=0.01454×体重(kg)+0.37211×FCM(kg/日)-1.9122(R^2=0.63)

4)全飼料中NDF含量とDMIの関係を根釧および新得のデータを用いて解析した結果、有意な負の直線的関係(R^2=0.20、P<0.001)が見られた。NDF含量は30~55%でDMIが最大になるといわれるが、根釧では牧草サイレージ主体で飼養され、DMIが低かったものと考えられる。

5)サイレージ主体飼養では、全飼料中水分含量が50%を越えると、DMIが低下するといわれているため、乾物率とDMIの関係を新得のデータで解析した結果、それらの相関は低く(図1:省略)、分娩後11~15週のDMI実測値もNRC推定値を上回った(表3:省略)。これらから、サイレージ主体飼養であっても、全飼料中乾物率がDMIに及ぼす影響は少ないと考えられた。

6)泌乳初期(分娩後1~10週)におけるDMI実測値は、各場およびNRC飼養標準の推定式よりも低く、根釧では分娩後6週まで、新得では10週まで漸増したため、各推定式を用いる場合の補正係数(実測値/推定値)を示した。

7)乾乳期(分娩前4~1週)のDMIは11.5kg/日、DMI/体重は1.62%であり、体重の寄与率は低かった。また、分娩前2および1週にはDMIが低下するといわれているが、本成績では各々12.5、11.5kg/日と低下は見られなかった(図3:省略)。