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酪農試験場

酪農試 飼料環境グループ 作物班のご紹介

こんにちは、根釧農試作物科です


2009.4.24更新

農業とは土地に立脚し、その土地ならではの方向を決定づけるのは「作物」です。
根釧地域では、牧草や飼料作物に立脚した酪農が主産業です。
根釧農試全体では、乳牛を使った試験はもちろん、施設機械、経営など、酪農を
トータルにとらえることができる研究体制が整っており、スタッフ同士の連携も盛んです。
その中にあって私たち作物科は、
作物にとっては世界的にも相当厳しい気象条件にある根釧地域で、
「情報技術」、「品種」、「栽培法」、「乳牛への利用」
をトータルにとらえ、
次のような視点で課題に取り組んでいます。


1.根釧地域に適した新品種育成の効率化をめざします
牧草・飼料用とうもろこしの現地選抜を進めます
根釧地域で栽培されている牧草・飼料作物は、札幌市にある北海道農業研究センター(牧草、とうもろこし)と訓子府町にある北見農試(牧草)で開発されたものが主です。どちらの試験場も気象条件は根釧地域にくらべてかなり良いので、そこで開発する新品種が根釧地域でも優れているとは限りません。
逆に、他の地域であまり優れていない品種が、根釧地域で良好な成績を出す場合もあります。
根釧農試では、飼料自給率の向上を第一に考え、日本の牧草地面積の25%を占める、牧草の一大生産・消費地に立地する試験場ならではの研究を進めます。

具体的には、品種開発の途中の段階において、根釧地域で試験を行う「現地選抜」を、上記研究機関と共同して実施しています。地域にあった品種を、効率よく開発してもらうことがねらいです。

特にサイレージ用とうもろこしについては、冷涼な根釧地域でも安定的な生産が可能になるように、関係機関等と強く連携しながら、極早生品種の開発・導入を進めています。涼しい根釧地域では、現在のところ、マルチ栽培(畑をビニールシートで覆う栽培法)が、収量の確保や冷害年対策として有効な技術とされていますが、ビニールシート(マルチフィルム)は、使用後に畑にすき込んでいること(環境問題)や、マルチフィルムも安くはない(コスト問題)などの問題点があります。
根釧農試では、脱マルチ栽培をテーマに掲げ、可能な限り露地栽培(マルチ等を全くしない栽培法)を選択してもらえるよう、冷害に少しでも強い品種を探していきます。

(参考)根釧地域の気象条件の特徴
夏:霧の発生する日が多く、冷涼である。
冬:晴れの日が多く、雪の量は少ない。最低気温が低く、土壌は深く凍結する。


新品種の根釧地域における適応性を検定します
牧草飼料作物も毎年のように新品種が開発・導入されていますが、前段で述べたように、その新品種が根釧の厳しい条件でも期待される能力が十分に発揮できるとは限りません。
そこで、最低3年間は決められた栽培法で生育の状況や収量を詳しく調べることになっており、その結果、これまでの品種にない特長が認められるなどして初めて、新品種の誕生となります。
また、越冬中の障害となる病害や寒害を人為的に誘導する条件の下で、新品種候補の生育を調べる試験も並行して実施しています。


2.牧草・飼料用とうもろこしの利用法、栽培法について
牧草、飼料作物の能力を十分に発揮させるために
草地は、一度造成したら、普通は何年も使い続けることになりますし、サイレージ用とうもろこしは、ただ量がとれればいいのではなく、少しでも手間を減らし、また牧草と比べて高エネルギー飼料としての価値が向上している必要があります。
草地の良好な植生を維持する利用法、播種時期、手間を省ける簡易播種法、長い年月にわたって良好な収量性を確保できる利用方法などを、その時々の予算課題に応じて研究しています。

最近では、イタリアンライグラスという牧草を用いることで、除草剤を使わずに難防除雑草を駆逐する技術や、とうもろこしであれば、個体サイズが小さな極早生品種を、いかに多く収穫するか、いかに低コストで作るか、といった研究を行っています。

全ての作物・品種についての利用法を詳細に試験することはできませんが、例えば、農業改良普及センターと連携した現場へのアドバイスや、現場で参考となる資料づくりなども通して、試験場の役割を果たしていきます。
この過程では、当然、現場からのご意見がよりよい研究に大いに参考になり、また次の研究につながっていることはいうまでもありません。
 なお、試験研究は、試験場内ばかりでなく、農業者等の畑の一部を借りて行うことも多いです。

情報技術の応用
牧草地というのは、1枚の畑が非常に大きいため、田んぼや他の作物での畑と違い、管理や把握が非常の難しいのが特徴です。
当科には、衛星リモートセンシングや、GIS(地理情報システム)など関連するデータを扱える機器・ソフト、技術があります。広大な牧草地を効率的に把握、解析できる技術として、草地の生産性評価、土地情報・気象データの集積などを進めています。これらを用いて、実際に把握できる事柄、把握する方法なども明らかになっています。
今後とも、様々な応用が期待される技術として、体制を維持・増進していくことにしています。

3.乳牛の飼養場面への応用について
自給粗飼料に最大限立脚した乳牛飼養にむけて
牧草やサイレージ用とうもろこしといった収穫物は、餌の「材料」に過ぎません。最終的には、どのように牛が利用するのか、または、どのように給与したらいいのか、ということになります。

根釧農試の他の科などと連携し、乳牛飼養、経営収支概念をトータルにとらえつつ、飼料生産・生産基盤の観点から研究を行っていきます。最近の取り組みの一例として、放牧管理に関する課題や、TMRセンターの設立・運営を成功させるための、実規模研究などにも対応しています。


最近の具体的成果は、作物科トップページからのリンクで見ることができます。