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畜産試験場

平成18年度研究成果

平成18年度北海道農業試験会議(成績会議)畜産部会提出課題

畜産試験場関係

課題名 判定 セールスポイント 成績の要約
黒毛和種雌牛の繁殖性低下要因と対策 指導参考 黒毛和種繁殖農家の繁殖性低下要因の抽出と、対策を示し、分娩前後の栄養管理、発情観察が重要であることを明らかにした。 黒毛和種繁殖農家の分娩間隔延長は、発情の見逃し、不明瞭な発情徴候、高産次牛繋養、不妊牛摘出不十分などが要因である。場内試験で、分娩前後の適切な栄養管理、1日2回の発情観察が重要であることを明らかにした。
乳牛の第四胃変位低減対策 普及推進 第四胃変位低減のための具体的対策および本症の高リ スク牛の検出法を示した。 第四胃変位の低減には、泌乳中後期の過肥防止、分娩前の繊維増給、分娩後の飼料中ルーメン内消化デンプン含量の制御、3産以上の牛へのCa剤投与が有効である。また、乾物摂取量、乳量および体重の低下により本症の高リスク牛を検出できる。
飼料用とうもろこしにおけるデオキシニバレノールの汚染実態と乳牛に及ぼす影響 指導参考 道内のとうもろこしサイレージのDON汚染状況と汚染 機序を示し、許容値内では乳量への影響はないことを明らかにした。 道内のとうもろこしサイレージ中DON濃度は平均1.18ppm(n=245)であり、飼料安全法による許容値(<4ppm)を超える割合は4%である。汚染は主に圃場立毛中にF.graminearumにより植物体全体に広がり、倒伏によりDON濃度は高まる。許容値内の低いDON汚染飼料では乳量への影響はみられない。
子牛の集団哺育農場における衛生管理技術 指導参考 子牛の集団哺育農場の疾病発生要因を解析し、多発農場でいくつかの低減策を実施し、子牛の死廃率を低減できた。 子牛の集団哺育農場では牛呼吸器病症候群の集団発生が懸念され、予防には導入子牛の着地検査、牛舎消毒、ワクチン接種などが重要である。また、集団哺育農場における疾病予防のための衛生プログラム指針を示した。
SPF豚農場の清浄度回復技術 指導参考 豚流行性肺炎の原因菌であるマイコプラズマが浸潤したSPF豚農場における清浄度回復技術を明らかにした。 マイコプラズマ(M.hyopneumoniae)の侵入により、SPF認定が停止したSPF豚農場でいくつかの衛生対策等を実施し、清浄度や肺廃棄率が改善され、再認定された。また、SPF豚農場で呼吸器から分離された指定疾病以外の病原菌は、生産性に及ぼす影響は小さい。
脳内接種によるBSE感染牛臨床症状 普及推進 BSE感染牛を作出し、BSEの症状を確認した。これらの臨床症状は、BSE発症牛の発見に活用できる。 BSE感染脳乳剤を脳内接種した牛は、接種18ヶ月以降より、姿勢・歩様の異常および音・視覚刺激への過剰反応など、BSEを疑う臨床症状を現した。これらの症状は、BSE野外発生例の症状と酷似し、BSE発症牛の発見に活用できる。
牛XY分取精子の受精能および分取精度評価 指導参考 分取精子の精度評価法を開発するとともに、分取精子により牛の性比をコントロールできることを実証した。 PCRによる分取精子の精度評価法を確立した。黒毛和種の分取精子を用いた体外受精および人工授精により、雌雄産み分けが可能である。また、精液の希釈緩衝液および凍結法の改良により、精子の生存率を向上できる。
牛受精卵におけるインターフェロンタウ分泌動態と栄養膜小胞共移植の影響 研究参考 牛受精卵のIFNt分泌動態を明らかにし、栄養膜小胞のIFNt分泌量が受胎率に影響することを示唆した。 牛受精卵のインターフェロンタウ(IFNt)発現量はDay18頃、IFNt分泌量はDay20頃がピークであった。また、共移植に用いた栄養膜小胞は作成当初からIFNt発現量が低いものが見られ、IFNt分泌量50ng未満を使用した場合では受胎が1頭のみであり、IFNt分泌量が受胎率に影響することが示唆された。
2分離受精卵からのクローン胚生産技術 研究参考 2分離受精卵の一方から15個(必要最低限)のリクローン胚作出が可能である。 性判別2分離受精卵の受胎率は33.8%であり、2分離受精卵の一方から15個(必要最低限)のリクローン胚作出が可能である。また、新鮮および凍結受精卵から高率にES様細胞が作出でき、ES様細胞からクローン胚の作出が可能である。
QP法による牛受精卵を用いた遺伝病診断 研究参考 QP法により、遺伝病を受精卵段階で迅速かつ安価に診断でき、将来、効率的な種雄牛の作出に活用できる。 QP法によりバンド3欠損症(遺伝病の1つ)の診断が可能であり、判定までの所要時間は従来法の1 / 4となったが、実用化に向けては感度のさらなる向上が必要である。
牛胚性判別キットを用いたフリーマーチンの迅速診断 指導参考 LAMP法による牛胚性判別キットを応用し、迅速に血液キメラ検査を実施し、フリーマーチンを判定した。 LAMP法によるウシ胚性判別試薬キットを活用して0.01%の性染色体キメラを検出できた。本法により、血液を試料として約1時間で性染色体キメラに基づくフリーマーチンの判定が可能である。
尿素添加によるでん粉粕のカビ抑制技術および肉用牛への給与法 指導参考 尿素添加によるでん粉粕のカビ抑制効果と肉用牛飼料としての栄養改善効果を示した。 でんぷん粕のサイレージ貯蔵の際に、尿素100g/m2の表面散布によりカビの発生を抑制できる。0.5%尿素の混合調製ではカビ抑制だけではなくルーメン内への窒素供給や飼料の分解性が高まる。肥育牛に対しては濃厚飼料との代替率を20%までとして利用する。
溶液噴霧によるでん粉粕への飼料養分添加法 研究参考 でん粉製造の脱水工程にノズルを設置する簡単な構造で均一な資材添加が可能。 でん粉工場における粕脱水工程での資材の溶液噴霧によって、設定どおりの濃度で資材添加できることを示した。模擬試験では、この方法による資材添加でんぷん粕は、農家により片寄りがないほぼ同品質の製品が供給できることを示した。
乳用種去勢牛に対する育成・肥育前期の飼料給与法および輸入乾草の飼料特性 指導参考 現在の配合飼料多給の育成方法に対し、育成期の乾草給与量を増やす飼養技術の有利性を示し、給与基準を作成。 育成期に乾草摂取量を高めることにより、肥育後期の濃厚飼料摂取量を高く維持し、良好な肥育成績を得られる。育成期や肥育前期の粗飼料として牧草サイレージが利用可能なこと、肥育期の輸入粗飼料としてオーツヘイやバーミューダストローが利用可能なことを示した。
液状飼料給与装置を用いた離乳子豚の飼養技術 指導参考 液状試料給与装置の有効活用法として、離乳後の発育停滞の改善及び早期離乳せざるを得なかった子豚の人工哺乳技術を提示。 液状飼料給与装置による液状飼料の頻回給与技術を用いることで、14および21日齢で離乳した子豚において問題となる発育停滞を改善することが可能。また、4日齢で離乳せざるを得なかった子豚を21日齢で推奨体重まで発育させることが可能であった。
繁殖雌豚のボディコンディション判定法 指導参考 従来のBCS法に比べて精度の高い繁殖雌豚の肥満度判定法を開発。 かん骨、背骨などの特定位置の触診スコアを4水準で採点し、スコアの合計値と背脂肪厚との関係が高い組み合わせについて検討し、初産豚および経産豚の肥満度をそれぞれ判定する方法を明らかにした。
アイヌワカメに含まれる機能性成分の鶏卵・鶏肉への移行 研究参考 未利用海草のアイヌワカメより抽出した脂溶性成分の飼料添加により、機能性成分の鶏卵への移行を確認した。 アイヌワカメより抽出した脂溶性成分の飼料添加により、鶏卵に機能性成分(抗アレルギー成分)が移行することを示した。しかし、アイヌワカメ乾燥粉末の添加では、移行は認められなかった。
自給粗飼料による授乳期母子羊の飼養法 指導参考 とうもろこしサイレージを用いた配合飼料無給与による羊の授乳期飼養技術を提示。 授乳期のとうもろこしサイレージ利用では、単子の75%、双子の25%が発育標準の平均離乳体重を上回り、母羊の体重変化も日本飼養標準の基準内であることから、ラム肉生産のうち授乳期について配合飼料無給与による飼養法を示した。
乳牛ふん尿・麦稈混合物の堆肥化過程における温室効果ガスの揮散量 研究参考 北海道の代表的な乳牛ふん尿堆肥化処理における温室効果ガスの揮散量を明らかにした。 容積重調製が不十分なふん尿の堆肥化からは多量に温室効果ガス(メタン・亜酸化窒素)が発生する。ふん尿に麦稈を十分量混合するか固液分離をして容積重を0.4以下に調製すると揮散量は低減される。