水産研究本部

試験研究は今 No.157「青年漁業士大いに語る 浜中町散布漁業協同組合 -村田準逸漁業士を訪ねて-」(1993年9月3日)

浜の声 -浜ウォッチング 青年漁業士大いに語る(2) 浜中町散布漁業協同組合-村田準逸漁業士を訪ねて-

今回の浜ウォッチングは、道東浜中町にある散布漁業協同組合の村田青年漁業士を訪ねました。村田漁業士は、釧路工業高校卒業後実家の漁業を継ぎ、昭和61年漁協青年部長となり、平成4年には北海道青年漁業士の称号を授与(平成3年度認定)されました。また地元の町おこしグループ「はまなか21世紀プラン会議」の代表として地域の若者のリーダー的存在となっています。

【プロフイール】
昭和29年4月26日生れ(39歳)
昭和48年道立釧路工業高校卒業
昭和61年散布漁協青年部部長
平成4年北海道青年漁業士
現在にいたる。
    • 村田漁業士
  村田家の漁業について教えてくれませんか。
  私が4代目で、1代目は山形県酒田市出身だったそうです。当時はニシン定置網漁業が盛んだったようで、ニシン粕にして出荷していたようです。現在は春のコマイ定置網、夏のコンブ、秋のチカ船曳網の3つの漁業を中心としています。

  漁業を継ぐようになった理由は?
  男4人、女1人の5人兄弟の3番目なんですが、兄2人が別の職業に就いたのと、漁業が好きだし、1人ぐらい後継ぎをしなければと思ったんです。5代目は今4歳です。(笑)

  漁協青年部活動に熱心に取り組まれたようですね。
  昭和61年から3期6年間青年部長をやっていました。青年部員の出稼ぎ対策として、昭和62年から火散布沼でカキ養殖に挑戦しました。4年目にしてやっと販売にこぎつけ、今年の7月、青年部事業のカキ販売金額は80数万円になりました。現在この事業は、5グループ10人の漁業者に引き継がれています。

  漁協青年部の後輩に一言。
  まわりの意向に左右されず、自分達が考えていることを思い切ってやってほしい。また獲ることばかりでなく、新しい増養殖試験に挑戦してほしい。

  浜中町の異業種交流に積極的に参加されていますね。
  「はまなか21世紀プラン会議」の会長をやっているんです。この会議の中から、昭和61年から高校生の修学旅行の受け入れが始まったんです。今年も大阪の上宮太子高校生160名が参加することになっています。高校生には、浜で「チャンチャン焼き」をして全員に魚を食べてもらうことにしています。魚が嫌いな子供達も、みんなおいしいと言って食べてくれるんです。それがとてもうれしい。本物の味を知ってほしいですね。この子供達が大人になっても魚が好きになっていてほしい。
また、湿原と遊ぼうという主旨から昭和60年から「霧多布湿原ファンクラブ」を結成しました。現在全国に3,800名の会員がいます。クラブのユニークな活動が認められて、昨年朝目新聞杜の市民大賞を受賞しました。クラブの仲間と湿原と海のかかわり等今後もいろんな活動をしていきたいと思っています。

  漁業士活動についてどう考えていますか。
  今年の3月に釧路支庁管内の漁業士視察で古平町に行き、道南地区の漁業士交流の現状について知りました。どこで、何をやっているのか情報不足で、漁業士として何をやったらいいのか、よくわからない状況です。「漁業士セミナー」等を企画し、漁協青年部員に波及させたいものですね。

  浜の漁業振興について考えていることは?
  コンブの荒廃漁場回復のため、雑海藻駆除をどしどしやるべきだと思います。今までは漁協まかせでしたが、漁業者の意識も変わってきています。チェーン振りやタイヤ礁投入等を実施して成果も見え始めています。竿前コンブの採り方についても従来のような根こそぎ採るのではなく、管理しながら採るという考え方が必要だと思います。
  火散布沼では、ウニやカキの養殖試験を実施し、「やれる」という事がわかり、皆の自信になっています。しかし、全員がが養殖漁業に取り組むには漁場が狭く、限界と考えています。今後外海へむけて、本気になってやれば、かなりの養殖実績があがると思います。養殖漁業を外海へ展開させるには、漁場や他の漁業との調整等問題点もあるが、沿岸漁業が見直され、増養殖漁業主体の時代がきっとくると確信しています。その証拠にチカは、ふ化事業(20年前から漁協単独で実施)のおかげで今でも漁獲できるんです。

  多方面での活躍で苦労も多い事でしょうが、今後とも地域リーダーとして頑張ってください。
  本日はどうもありがとうございました。

【インタビューを終わって】
  村田漁業士は、とにかくエネルギッシュな人でした。青年部長時代には家にいたことがないくらい忙しい毎日だったようです。それが今漁業や町おこし活動でも大きく実っています。さらにこの輪が大きくなって浜中町の発展につながることを期待したいものです。
(釧路水試 水産業専門技術員)