水産研究本部

試験研究は今 No.170「噴火湾ホタテガイ養殖に関する打ち合せ会議の開催について」(1994年1月14日)

噴火湾ホタテガイ養殖に関する打ち合せ会議の開催について

  平成5年11月4日函館市において、「噴火湾ホタテガイ養殖に関する打ち合せ会議」を開催いたしました。この会議では、噴水湾における養殖ホタテガイの採苗が平成4年、5年と2年連続の不振だったところから、函館水試、渡島・胆振支庁及び水産技術普及指導所の関係機関から26名が参加し、平成6年に向けての取り組み方法等について協議をいたしましたので、この概要について紹介いたします。

  平成4年、5年の噴火湾におけるホタテガイ採苗不振の原因については、母貝の産卵自体が不振だったのか、また正常に産卵が行われたけれど幼生がなんらかの影響で死んだのか、あるいは湾外に流失したのか等が考えられます。そこで、これらを検証したのが表1の内容です。平成4年は3月から5月にかけて、親潮系水が噴火湾に流入し水温が2度程低下し、春季の水温が低く経過しました。このため産卵を誘発する有効な水温上昇がないまま生殖巣が長期間に渡って低水温にさらされ、組織的な異常が起こり産卵が正常に行われなかったと考えられました。平成5年は各調査時に色々なサイズの浮遊幼生が極めて少量ながら出現しました。これは、5月以降低水温傾向が続いたため、小規模な産卵が継続的に行われる「ダラダラ産卵」型であったと考えられます。しかし、6月に入ってから時化等もあり急激な温度上昇が見られ、遅い時期に比較的まとまった産卵が行われました。この時点では多くの漁業者が地場採苗に見切りをつけていたこともあって、せっかくの浮遊幼生を採苗に結びつけることが出来ませんでした。

  採苗を安定的に行うためには、まず採苗予報の精度を向上させることが必要となりますから、平成6年に向けて表2にフローとして示したとおり取り組んで行くことになりました。特に平成6年には地場物のほか日本海、オホーツク海、陸奥湾産が産卵母貝となって加わり複雑な状態が予想されます。それで産卵盛期の予測を行うために、採苗器を入れる前の5月中旬ごろまでに予報会議を開催することにしております。予報対策のための調査等については、産卵母貝として色々な海域の貝が加わるために産地別の数量をきちんと把握し、かつ産地別の生殖腺指数を調査し、卵の熟度状況を確認することとしております。低水温の原因となる親潮系水の噴火湾への流入状況については、月1回を原則として出来る限り多くの海洋観測等の調査を実施し、予報を出す際の根拠資料としたいと思っております。また、予報会議で採苗不振と考えられた場合は、産卵誘発の実証試験を考えております。この試験は、産卵誘発は一般的に水温8度以上で行われるとされているところから、特定の漁業者の協力を得て産卵母貝(3年貝)となる養殖桁を浮かせてやり、表面水温で刺激誘発し産卵するかどうかを検証します。
(函館水試企画総務部)

    • 表1,2