水産研究本部

試験研究は今 No.178「平成5年度水産試験研究地域プラザ開催(オホーツク管内)」(1994年3月18日)

平成5年度 水産試験研究地域プラザ開催(オホーツク管内)

地域プラザ開催風景
  平成元年度から始まった水産試験研究プラザの新しい試みとして本年度は魚種を絞って、一つのテーマにした地域プラザが全道2カ所で企画されました。

  開催地は新庁舎披露を兼ねた中央水試とホタテを抜きにしては北海道漁業が語れないと網走水試が選ばれたわけです。育てる漁業の対象として何があるのかという状況の中でホタテに目をつけた網走水試の先輩研究員が研究に着手し、試行錯誤を繰り返し、今日のホタテ漁業の繁栄の基礎づくりに貢献したと聞いています。今、ホタテは、円高、消流、漁場のヒトデの問題、そして価格の面でも昨年に比べ、平均で約30パーセントも安いという厳しい状況におかれています。

  2/22常呂漁協漁村センターで開催しましたが、全道的に台風なみの低気圧の襲来で大変な吹雪に見舞われ、一部国・道道が不通になる最悪の天候となった当日は、出席者があるのかと心配しましたが、雪だらけになった漁業関係者が200名近くも集まり、改めてホタテ漁業への熱意が伝わってきました。
  はじめに網走水試吉崎勲場長から主催者挨拶があり、水産部番匠義紘参事、管内漁業協同組合長会を代表して常呂漁協組合長小笠原敬様からの来賓挨拶のあと、「ホタテの将来を考える」と題して栽培振興公社の菊池副会長から講演をいただきました。その後の課題発表ではまず、新原増殖部長がホタテガイの試験研究の概要等水産試験場が取り組んでいる調査・内容について説明をし、次に宮園研究職員が「ホタテガイの成長と健康度判定について」と題して発表しました。天然資源を利用していた時代から種苗放流によって輪採制の漁業が始まって放流規模が拡大してから様々な問題が出てきております。近年になって成長不良が取りただされて健康な貝を生産維持していく研究が必要になってきました。そのため、このような部分に近づいていくための基礎研究をしております。この資料集めをしている時にこれまでの漁業の中で貝がどのように成長しているかというポイントに注意が払われていなかったことを深く反省し、H3年度から漁協の協力を得て実施している「ホタテガイの成長に関する一調査」で各漁場環境での貝の成長状態がどのように違うのかということを調査しております。

  漁場を知るためにはこれまで水温というものがよく使われましたが、もっと別の手段を使って漁場を知る方法を考えました。ホタテガイの成長についてはあまりよく分かっていなかったので、実験的にいろいろな環境をつくって生態の研究を別の角度からアプローチしようと生化学的な面からこの健康度判定を手掛けたわけです。

  次に、蔵田魚貝科長から「ヒトデの生態(産卵~付着)について」の発表があり、特に産卵から浮遊幼生までヒトデ稚仔がホタテ付着稚貝に及ぼす影響について説明しました。

  最後に紋別支場の野俣加工科長が「ホタテガイのウロ処理について」と題してホタテ漁業生産過程の最後で問題となっているウロの有効利用の可能性、ウロ処理とホタテ漁業全体との関わり、ウロ処理の方向性について説明しました。

  1970年前後にはいろいろな培養殖技術が開発され、70年代半ばには、北海道では約10万トンへと増加して行きましたが、この時期に貝毒の発生が見られ、一時的な減少が見られました。この貝毒への対処方法として条件付き加工が開発され、貝毒発生期であっても有毒な部位を取除いて出荷出来るという体制が出来、培養殖事業が拡大をしたわけです。それに伴い加工工程で排出されるウロが環境問題となってきて、ウロの適切な処理法の開発はこれからのホタテガイの安定生産には欠くことができません。貝毒のない時期のホタテガイのウロについてはカドミウムを視野におきながら有効利用を見て行きたいと思います。

  ホタテのウロにはどのような成分が入っているかというと、蛋白質、脂質という一般的な成分の他にエキス、旨味の成分、動脈硬化に良いEPA、食べれば頭の働きが良くなるというDHA、鮭の赤い色やカニの殻に含まれるカロチノイドなどが含まれています。このような成分を利用したかご漁業用の餌、養殖用の餌の他に旨味成分などで天然調味料や健康食品が出来ないものかと研究を続けています。

  なお、この地域プラザでの研究者の発表内容については、紙面の都合上、一部しか紹介出来ませんが、後日、漁放課から全道の試験研究プラザの結果をまとめたものが、発行されますので、是非一読願います。
(網走水産試験場企画総務部)