水産研究本部

試験研究は今 No.529「コンブの機械乾燥における注意点」(2004年8月23日)

試験研究は今 No.529「コンブの機械乾燥における注意点」(2004年8月23日)

コンブの機械乾燥における注意点  ~ 平成16年度釧路昆布製品改善品質向上講習会から ~

  2004年5月25日、厚岸町社会福祉会館において釧路昆布普及協議会(会長・川崎一好厚岸漁協組合長)主催の釧路昆布製品改善品質向上講習会が開催され、「コンブの乾燥方法等製品製造における注意点」という演題で講演しました。この講習会は4年ぶりの開催で、関係漁協(釧路東部、昆布森、厚岸、散布および浜中漁協)の生産者を含め、約180名が参加しました。

  コンブの乾燥は、天日乾燥で行った方が作業効率が良く、品質的にも優れていると言われています。しかし、道東の太平洋岸は夏場の天候が不順なため、一部を機械乾燥に頼らざるを得ないのが現状です。そこで、特に機械乾燥する上での注意点についてコンブの特性と合わせてお話ししました。以下にその内容を簡単に紹介します。

(1)機械乾燥による品質低下

  生のコンブは水分が高く(85~87パーセント)、1駄(20キログラム)の乾燥コンブを作るためには実に100キログラムもの水を蒸発しなければなりません。機械乾燥での品質低下は、乾燥中にコンブから蒸発した水蒸気により周囲の湿度が高くなり、乾燥がうまく進まないことが主原因と考えられてます。したがって、いかに効率よく乾燥するかが重要になってきます。

機械乾燥によるコンブの品質低下は、
(1)表面に青い“コケ”が生えたような状態になる通称「青ゴケコンブ」、
(2)変色(緑変)、
(3)白粉
が主なものです。
(1)の「青ゴケコンブ」は子のう斑組織が高湿度下で蒸れや結露によって崩壊し、中の緑色色素が表面ににじみ出て乾燥固定された現象と推定されています(写真1)。

   (2)の変色は、乾燥初期に比較的高い温度で乾燥した場合、蒸れていわゆる湯通しコンブと同じ状態となり、緑色になってしまうことです。この現象はコンブの色素が熱に弱いことに起因しており、この緑色は乾燥が進んだ後も消えません。上記の(1)と(2)はいずれも乾燥室の中で限度以上の量のコンブを収容したり、換気が不十分なときに湿度が高くなって発生します。

  (3)の白粉の発生は天日乾燥でもみられますが、機械乾燥に多く発生します。この白粉の正体は、元々コンブに含まれるマンニトール(砂糖の仲間)や無機成分であり、食べても無害です。白粉発生の原因は、乾燥速度のスピード(機械乾燥の方が遅い)や周囲の湿度(機械乾燥の方が高い)が影響していると思われます。
    • (写真1)
      写真1 “青ゴケコンブ”の組織

      (写真提供:釧路水試 佐々木政則氏)

(2)どのようにして乾燥するのか

  では機械乾燥ではどのような乾燥方法が望ましいのでしょうか。表1に要点をまとめました。

  まず、乾燥室へのコンブの収容量についてですが、たくさん入れすぎると乾燥が進まないばかりか、蒸れや結露の危険性があります。乾燥機によって能力が異なるのでメーカーが推奨する収容限度を守ることが大切です。次の乾燥時間については他の要因とも関係しますが、1日作業となるように採取当日に終了させるようにします。中途半端な乾燥状態で乾燥をやめると白粉が発生しやすくなります。温度も重要です。特に、生から乾燥する場合、乾燥初期に湿度が急激に高くなり、蒸れや結露が発生しやすいので温度をあまり上げないようにします(35度以下)。その他は40~50度とします。風速は理想的には1~2メートル/秒ですが最低でも20センチメートル/秒が必要です。そのほかに換気を十分すること(新鮮な空気の流入と湿った空気の排気)も重要です。湿度は上記の乾燥条件によって決まってきますが、もちろん低いほど良く、高くても80パーセント以下とする必要があります。

表1 機械乾燥する上での注意点 
収容量 許容限度(機械メーカー設定)を超えない量。
乾燥時間 8~12時間。1日で乾燥を終了させる。
温度 40~50度の範囲内。ただし、生から乾燥する場合には35度以下。
風速 20センチメートル/秒以上。1~2メートル/秒が望ましい。
換気 新鮮な空気の流入と湿った空気の速やかな排気。

以上に述べた内容は、過去に水産試験場で行った試験結果に基づいたものです。
これらの試験はかなり以前に行われたものですが、乾燥に関する基本的な考え方は変わりません。
乾燥は熱と風を利用して湿度を抑制し、蒸れたり結露しない条件を把握することが重要です。
(釧路水産試験場 利用部 飯田訓之)