水産研究本部

試験研究は今 No.531「研究成果地域説明会(機船ミニプラザ)開催される」(2004年10月20日)

研究成果地域説明会(機船ミニプラザ)開催される

  日本海での沖合底びき網船の休漁明けの操業を翌日に控えた平成16年9月14日、稚内水産試験場大会議室において、稚内機船漁業協同組合と構成漁業会社の社長さんや漁労長さん達を含む関係者30余名に水試、支庁、市役所等関係者を合わせた約50名の出席のもと、毎年恒例の機船ミニプラザが開催されました。

  事前の講演要望内容は、1)イカナゴに関して、(1)資源状況、(2)卓越群の発生間隔、(3)漁期の海水温分布状況、2)ホッケに関して、(1)資源状況及び資源評価、(2)産卵域の場所、(3)ローソクボッケ分布状況、3)スケトウダラに関して、(1)日本海稚仔魚分布調査結果に基づく回遊及び海底生活の実態、(2)オホーツク海域での着底生活の可能性、(3)受精卵洋上放流を行った場合の資源回復にかかる有効性の9題でした。

  開催にあたり、佐野場長から、日頃の研究調査等への協力について感謝と、沿岸・沖合いとも同じ資源を利用しており、水試の調査データを知ってもらい、うまく資源を分け合って欲しいこと、機船漁業の技術、歴史、伝統を生かして資源を守って操業して欲しいとの挨拶がありました。

  イカナゴについては、田中北方資源科長から「2004年の8月までの漁獲物は、オッター3,066トン、かけまわし5,535トンで、オッターが微増、かけまわしは減少。オッターのCPUEは昨年より増加したが、過去からの数値と比較すると低水準。毎年一定の資源加入があるとはいえ、近年その量は多くない。漁獲物は20センチメートル以上の大型個体が中心で小型魚は少ない。6月、オッターではイカナゴ・キタイカナゴ双方が漁獲対象になったが、7月以降、かけまわしの漁獲物はほとんどイカナゴであった。CPUEが低く、卓越群がみられない。小型魚も少ないことから、資源水準(漁獲水準)は来年も低水準で推移。水温は昨年は低かったが、今年は例年並に推移した。」との報告が行われました。

  ホッケについては、岡田研究職員から「道北日本海の産卵期は10月中旬から下旬。雄が卵を守る。産卵域は利尻・礼文島、天売・焼尻島、武蔵堆、サハリン海域の海馬島の沿岸部の岩礁地帯や堆水域。稚魚・幼魚は産卵域からサハリン西岸域、オホーツク海域へ広く分布し表層生活を送り、やがてローソクボッケと呼ばれる着底生活に移行する10~12月にオホーツク海から日本海側に回遊してくる。例年9月に実施している北洋丸によるノース場3海区でのトロール調査では、0歳と1歳魚が漁獲され、0歳魚が多い地点もあった。資源は中水準で、資源動向は横ばい、資源維持の可能性は大。」との報告が行われました。

  スケトウダラについては、和田研究職員から「日本海北部系群は、現在、桧山~後志沿岸が主たる産卵場で、武蔵堆など北部海域で若齢魚が育つとされている。卵稚仔時代の分布からオホーツク海とのつながりも再検証する必要がある。産卵期前に計量魚群探知機で分布量を把握しているが、平成16年度から若齢魚の調査も開始する。資源状態は低水準で、卓越発生がみられず、さらに減少傾向にある。国の生物学的許容漁獲量のルールでは、大幅な漁獲制限をしなければならないほど、資源状態は悪くなっている可能性があるとのことである。」との報告が行われました。

  さらに、スケトウダラ受精卵洋上放流の効果について、吉田資源管理部長から「過去には、ベーリング海での日本漁船の締め出しに対するパフォーマンスで実施されたが、これがきっかけで北海道沿岸でも資源保護思想の啓蒙ということで要望があり、北水試も各地で人工受精手法の指導を行った経緯がある。しかし、スケトウダラはその繁殖行動や繁殖生態から、栽培漁業に向いた魚種ではないので、現在はそうした指導はお断りしている。大学の実験所でのスケトウダラ卵の人工受精の手順をビデオで見てもらったが、漁船の船上作業中に行っても生物学的にほとんど意味がないことがわかってもらえると思う。」との報告が行われました。

  質疑応答では、「オホーツクのホタテガイ地蒔きで、イカナゴの産卵場が無くなり、資源が減ったのではないか。」、「利礼の刺し網でホッケが獲れないのは、沖底がローソクボッケをとるからと文句を言われる。水温や餌の問題ではないか。」、「今年は良いホッケが獲れているが、卵があり、すり身にする際、邪魔になる。1歳で産卵するものなのか。」、「漁獲量変化といっても、年代で隻数や漁獲対象など現場の条件が異なり、一概に比較出来ない。こうした点も考慮して資源評価をして欲しい。」、「スケトウダラ資源が悪くなったのは、地球温暖化の影響か。」、「ノルウェーではマダラの養殖を行っていると聞いたが。」、「スケトウダラ卵の人工受精指導を稚内水試から受けたが、我々は実施しなかった。」といった、漁業現場の生々しい質問や意見が出ました。的確な回答が出来たかどうかはわかりませんが、今後の業務に向け、大変参考になりました。
(稚内水試資源管理部・企画総務部)

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