水産研究本部

試験研究は今 No.547「カレイ類を対象とした遊漁調査」(2005年5月31日)

カレイ類を対象とした遊漁調査

はじめに

  近年の釣りブームにより、全国的に遊漁人口が増えています。北海道の他地域ではわずかながらも遊漁によるカレイ類の釣獲に関するデータがありますが、オホーツク海ではまったくありませんでした。そこで、カレイ釣りが盛んな紋別で遊漁の実態を把握するために調査を行っています。ここでは調査を始めてからこれまでの調査結果をお伝えします。岸壁から釣りをする、いわゆる陸釣りについては、把握がほとんど不可能なため、「遊漁業船の適正化に関する法律」に基づいて営業を行っている遊漁船(以下、「遊漁船」という。)を対象に調査しました。

調査内容

写真1
遊漁船による釣獲状況
  紋別でカレイ釣りがさかんに行われている6~9月に毎月一回、土曜日に乗船調査を行いました。遊漁船上では、遊漁者の釣獲物を種判別しカウントした上、全長を測定しました。土曜日を選んだのは遊漁者がもっとも多いためです。紋別では小型の個体はリリースするように促していますが、ここではリリースするものもすべて測りました。

  2002年に大型の遊漁船A、2003年に大型の遊漁船Aと一般的な大きさの遊漁船B、2004年に一般的な大きさの遊漁船Cに乗船しました。

  遊漁船Aは、平日2時間、休日4時間の釣りコースが設けられています。調査は午前7:00~11:00のコースで行いました。2003年7月は7日間のみの営業でした。遊漁業船Bの遊漁時間は午前5:00~12:00までですが2003年9月は荒天で中途帰港したため調査は中止となりました。遊漁業船Cの遊漁時間は午前6:00からで貸切が主体なので、乗船した釣り客の判断で終了時間が決まることが多いのですが概ね、13:00頃に終了するそうです。

  さらに、出入港届を用いて延べ遊漁人数を集計しました。

結果

(1)釣りの対象
  図に2004年の調査中、各月で一番数多く釣られた魚種の全長組成を示しました。6~8月は大量のマガレイ(尾数割合はすべて9割以上)、9月は数は少ないですが大型のクロガシラガレイ(尾数割合にして約9割)です。
    •  図
(2)釣獲量

  一回の釣りでどれくらい釣られているかというのは大きな関心事の一つです。調査のときに測った全長から、一尾ずつ体重を推定して足し合わせ、その日の調査での全釣獲量を推定しました(表)。

 大型の遊漁船Aでは一人あたりの釣獲量は数キログラム程度に対し、遊漁船B、Cでは10キログラム以上釣れることもざらにあるようです。
 

    • 表
      表 一回の調査での釣獲量

(3)出入港届

  紋別では安全のため、遊漁船や個人の所有するプレジャーボートは出航する際に必ず出入港届を提出します。この出入港届には、乗船人数、釣り時間などの記入項目があります。これを集計することによって、遊漁者数や遊漁船・プレジャーボートの出航隻数、さらに時間まで把握することができます。

  大型の遊漁船Aの延べ遊漁者数は2002年に8157人、2003年に5928人、2004年に6455人でした。ただし、あまり釣りの経験のない方の乗船が多い遊漁船なので船に弱い人や子供も多く含まれることから、遊漁者の実数は少なくなります。遊漁船Aを除くその他の一般遊漁船、およびプレジャーボートの延べ遊漁者数は2002年に2550人、2003年に2649人、2004年に1823人でした。遊漁業船・プレジャーボートの釣り時間はだいたい5~6時間でした。

まとめにかえて

  調査の合間に遊漁者の方と話してみると、旭川や札幌など遠方から一泊して紋別に来る遊漁者の方が多くいました。仲間と紋別に来て釣りをするのが楽しみのようです。しかし、海の魚は無主物だからといって誰でも獲り放題というわけではありません。漁業を生業とし水産物を消費者に供給している漁業者と、趣味として釣りをしている遊漁者、更に遊漁船業を経営している遊漁船業者にとっても魚は大切な資源です。それぞれのかねあいをどのようにしていくのかが今後、資源を育てていくうえで大変重要な課題になりそうです。

  まず、手近な方法として、小型魚のリリースを徹底することが大切です。図が示す通り、全長の大きい個体から小さい個体まで釣られています。調査中に見ている限りでは使う釣り針の大きさを変えている様子はなかったので、遊漁では小さい個体まで釣ってしまうといえるでしょう。小型魚のリリースが実際どの程度徹底されているのか、調査員である私たちには非常に判断しにくい点ではありますが、自分の腕に自信のある人の方がリリースを徹底していると感じました。釣り好きの最低限のマナーとして守ってもらいたい約束事としてほしいものです。(網走水産試験場 資源管理部 室岡瑞恵)

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