水産研究本部

試験研究は今 No.151「ヒトデは増えている!!」(1993年7月9日)

ヒトデは増えている!!

留萌南部管内では浜に出ると、ヒトデを目にする機会が多くなりました。浅海漁場調査ではイトマキヒトデ、エゾヒトデ、ヒトデ、網はずしをしている所ではヒトデ、ニッポンヒトデ、そしてホタテの採苗器にはヒトデが……。 
表1  浅海漁場でのヒトデ類の生息状況
年別のヒトデ生息数量(個数/平方メートル)
  61 62 63 2 3 4 5
増毛 16.9 23.8 20.0 18.5 26.8 23.8
留萌 3.2 4.6 6.4 9.6 17.7 10.5 12.9
小平 2.6 2.4 11.4 5.9
-:未実施
*:未整理
漁場効果調査報告書
(留萌南部指導所)
 表1のように、留萌と小平は年々、生息数が増加しているが、増毛は以前から生息数が多いのが特徴的です。3地区に共通して言えることは、平成3年に急激に増加(多いところでは50個/m2)していることです。平成4年に少し減少しているのは、調査時に異常に海藻の繁茂が多かったためと考えられます。
 
  この事から心配されることは、ウニ・アワビ類への影響です。浮游生活を終え、やっと海底に沈着したウニ・アワビの子供達に襲いかかるヒトデ達!  いったいどれくらいの被害があるのか想像もつきません。管内でヒトデ駆除を一度もやったことのないある漁場へ、アワビ人工種苗を放流したところ、ヒトデ類の種類と数量が桁はずれに多く、その大きさもバカでかく、相当数のアワビ種苗が食害にあっていることが確認されています。

   この様に、ウニ・アワビ資源を守るためにはヒトデ類の駆除は大切なことです。現在利尻富士町鬼脇漁協青年部が取り組んでいる「籠によるウニ漁場の害敵駆除試験」の結果が効果的な方法として結果が注目されます。 もちろん、カニ・ツブ等その他の害敵についても駆除が必要なことは同様です。

沖合漁場でのヒトデの出現状況

  次に沖に目を向けてみますと、ヒトデの浮游幼生も多くなっているようです。

  平成3~4年まででは、多くても10個/トンが最高でしたが、5年になると図のように、1ケ月に渡り10個/トン以上が続き、多いときは60個/トン近くと大量のヒトデの幼生が出現しました。

  これだけ幼生がいれば、ホタテの採苗器にたくさんのヒトデの混入があるのではないかと予想したところ、いままで経験したことのない多数のヒトデが混入していました。(下表のとおり)
地区 提供者 投入日 調査日 外袋材質 ホタテガイ付着器・付着数 ホタテガイ付着器・地区平均 ヒトデの混入数・付着数 ヒトデの混入数・地区平均
臼谷 A 5月11日 6月23日 タマネギ 2,132 2,766 13 22
ネトロン(粗) 4,020 30
ネトロン(細) 2,143 24
鬼鹿 B 5月10日 6月24日 ネトロン 95 926 57 36
C 940 9
D 1,744 42
臼谷 E ネトロン 4,536 2,996 30 14
F 2,872 2
G 1,580 10
増毛 H ネトロン 3,188 1,214 20 17
I 674 3
J 418 16
K ネトロン(内袋ナイロン) 578 26
  ホタテの採苗器1袋にわずか数個体のヒトデ類が混入しても、ホタテ稚貝が全部食害にあうので、管内のホタテ養殖部会に集まってもらって緊急対策会議を開き(5.6.25)、通常9月から始める稚貝採収を早めて、7月から仮分散(早期分散)を行うことを取り決めました。

  以上のように浅海、沖合いともに、ヒトデに悩まされているわけですが、これを機会にヒトデについてもっと知ることができれば、その対策についての知見も得られるでしょうし、同じ棘皮動物であるウニ、ナマコ類を増やす手がかりにも結びつくかも知れません。

  ヒトデが増えた理由については、様々な要因が密接に関連していると思われますが、それを探っていく内で、ヒトデは何かをきっと教えてくれるのではないでしょうか。
(留萌南部地区水産技術普及指導所)
(稚内水産試験場:主任専技)