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網走水産試験場

栽培対象資源(ホタテガイ等)の生理生態に関する調査研究

ホタテガイの調査研究

ホタテガイ漁業の現況

ホタテガイ漁獲量


北海道北東部に位置するオホーツク海(網走支庁管内)では道内でも有数の漁場が形成されています。なかでも、サケ・マス(定置網)漁業とともにホタテガイ(地まき、養殖)漁業が盛んです。ホタテガイ漁業は、本道水産業のなかで最も大きな500億円産業を形成していますが網走支庁管内は、全道第一位の漁獲量を誇り、道全体の約4割を占めています。

ホタテガイの産卵から漁獲まで

ホタテガイ(写真1)は,雄と雌に分かれており(写真2),海底の水温が5~8度になった頃に産卵を開始します。この時期は,オホーツク海では5月頃になります。産み出された卵は,海水中で受精後,成長しながら約 1ヶ月間浮遊生活を送ります。この幼生を「浮遊幼生」(写真3)と呼びます。この幼生は,殻長が250マイクロメートル(=0.25ミリメートル)位に成長すると,物質に足糸で付着する性質があります。この性質を利用して,採苗器(写真4)を海中に垂下し,稚貝を採集することを,「天然採苗」と呼びます。
    • 写真1 左殻と右殻
    • 写真2 雄と雌
    • 写真3 浮遊幼生(殻長260マイクロメートル)
    • 写真4 採苗器(網走)
この採苗器投入時期を決定するために,毎年5~6月に海水中の浮遊幼生の出現状況を調査します。沖合の水深15~30メートルの所で,プランクトンネットを垂直に曳き,浮遊幼生を採集します。採集した浮遊幼生の中からホタテガイの幼生だけを識別し,顕微鏡を用いて大きさ別に計数します。付着間近な大きさ(殻長200~250マイクロメートル)になった幼生が出現してきた時期に,漁業者に採苗器を投入する指示を出します。これを「採苗予報」と呼んでいます。
漁業者は,8~9月に,採苗器を取り上げて,殻長が1~2センチメートルに育った付着稚貝を座布団籠(写真5)に収容します。この作業を「分散」と呼びます。分散された稚貝は,沖合に垂下され,翌年5月までに流氷下で約3~5センチメートルに育ちます。この大きさに育った種苗を放流します(写真6)。放流漁場(図1)は,4区画に分けられており,毎年区画を変えながら放流します。これを「四輪採」と呼んでいます。この時,漁場の1平方メートル当たり5~10個体に相当する量,1区画に1~3億粒の種苗を放流します。放流後,3年を経過した4年貝を1~3万トン漁獲します(写真7)。放流された後,漁獲までの生残率は,昭和55年頃には20パーセント程度と低かったのですが,最近は種苗生産技術と放流技術の向上に伴って50~60パーセントに上昇してきました。オホーツク海における天然と放流ホタテガイの漁獲量は,約25万トンに達しています(図2)。漁獲された貝は,生鮮,干貝柱,ボイル貝柱など多くの製品として日本中や香港へ出荷されます。
    • 写真5 座布団籠
    • 写真6 稚貝放流(常呂)

      西浜雄二氏提供

    • 写真7 操業風景(常呂)

      西浜雄二氏提供

    • 図1 常呂のホタテガイ漁場(四輪採)
    • 図2 地まきホタテガイの漁獲量(養殖貝除く)


ホタテガイの調査研究

    • ホタテガイ解剖写真

      左上から中腸腺、貝柱、生殖巣、 外套膜

研究拠点としての位置付け
当網走水産試験場では、全道のホタテガイ漁業について生産から利用・廃棄物の処理利用までの一貫した研究拠点として位置づけられています。 
ホタテガイ生産をめぐる情勢
管内の漁獲量の約5割を占める主要魚種であるホタテガイは、極めて厳しい状況におかれています。
  • 成長不良現象による貝柱歩留まりの低下、貝の小型化
  • 天然採苗の不安定化
  • 赤潮の発生、河川の影響などによる生育環境の悪化
  • 貝毒の発生
  • 消費拡大やブランド化
  • 加工残渣の資源化による処理問題解決

当水試では、以上の各種課題の解決のため、次のような調査・研究に取り組んでいます。
【主なホタテガイに関する調査研究】 

☆天然採苗をサポートし、採苗安定を目指すために
○オホーツク海ホタテガイ外海採苗安定調査および浮遊幼生自動解析技術開発(H24-26)

 

☆成長不良現象による貝柱歩留まりの低下、貝の小型化の問題を解決するために

○ホタテガイ成長モニタリング調査(H23-25)
○漁場海底画像を利用したホタテガイ高精度資源量推定技術開発(H23-25)
○根室海峡ホタテガイ生産安定化に向けたモニタリング調査(H24-26)
○地まきホタテ漁業海域におけるホタテガイおよびマヒトデの移動に関する研究(H25)
○超音波テレメトリー手法を利用した曳網軌跡および曳網距離の解明(H25)

 

☆貝毒の発生を未然に防止するために
○ホタテ貝等二枚貝に関するモニタリング

(貝毒プランクトンモニタリング調査)(H17~)

☆輸出促進のサポートによる価格の安定のために
○対EU輸出向けホタテ貝に係るプランクトン検査委託業務(H14~)
○乾貝柱の品質向上に関する試験-1(H24-26:加工利用部)

☆国内消費の拡大による価格の安定のために
○冷凍ホタテガイ貝柱の品質向上に関する研究(H24-26:加工利用部)
○ホタテ貝貝柱の品質に関する試験-1(H25:加工利用部)

☆加工残渣の資源化
○釧路水試加工利用部にて研究しています。

お問い合わせ先

調査研究部 管理増殖グループ

  • 住所:〒099-3119 北海道網走市鱒浦1丁目1番1号
  • 電話番号: 0152-43-4591
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  • メール:abashiri-fish@hro.or.jp